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『遊びの数論60』の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。

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2026-06-07 再びウォルステンホームの定理 なかなかいいアイデア?
ウォルステンホーム(Wolstenholme)のパズルは、
1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 + 1/5 + 1/6 = 49/20
の分子が 72 で割り切れるのはなぜか? というようなもの。一般に p が 5 以上の素数のとき、 1 + 1/2 + ··· + 1/(p − 1) の分子は p2 で割り切れる。
このパズルを例えばこう拡張できる:
1/(1⋅2⋅3) + 1/(1⋅2⋅4) + ··· + 1/(4⋅5⋅6) = 49/48 (✽)
の分子が 72 で割り切れるのはなぜか? ここで分母の三つの因子 i, j, k は 1 から 6 までの整数の全パターン(ただし i < j < k とする)の組み合わせ。
拡張版の方がさらに複雑そうだが、要は 6! 倍(つまり 1⋅2⋅3⋅4⋅5⋅6 倍)した整数が 72 の倍数であることを言えばいい。 1/(i⋅j⋅k) の形の 6! 倍は a⋅b⋅c の形で表記可能(a, b, c は整数で 0 < a < b < c < 7)。例えば、
1/(2⋅3⋅5) × (1⋅2⋅3⋅4⋅5⋅6) = 1⋅4⋅6
のように。(✽)の左辺を 6! 倍して、結果の項をソートして並べると:
(1⋅2⋅3 + 1⋅2⋅4 + 1⋅2⋅5 + 1⋅2⋅6) + (1⋅3⋅4 + 1⋅3⋅5 + 1⋅3⋅6) + (1⋅4⋅5 + 1⋅4⋅6) + (1⋅5⋅6)
+ (2⋅3⋅4 + 2⋅3⋅5 + 2⋅3⋅6) + (2⋅4⋅5 + 2⋅4⋅6) + (2⋅5⋅6)
+ (3⋅4⋅5 + 3⋅4⋅6) + (3⋅5⋅6)
+ (4⋅5⋅6)
a⋅b⋅c の形の各項について、「a, b, c のどの二つも、和が 7 でないもの」は、
{1 or 6}⋅{2 or 5}⋅{3 or 4}
の組み合わせの八つ。 (1 + 6) × (2 + 5) × (3 + 4) を展開したときの 8 項と同じなので、それら 8 項の和は = 7 × 7 × 7 であり、 72 で割り切れる。よって「残りの項の和も 72 で割り切れる」ことを言えば、「全体が 72 で割り切れる」ことが示される。それは易しい。次の基本公式だけで足りる:
1 + 2 + 3 + ··· + n = n(n + 1)/2 ‥‥①
12 + 22 + 33 + ··· + n2 = n(n + 1)(2n + 1)/6 ‥‥②
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冒頭の例の続き。(✽)の左辺を 6! 倍して、和が 73 に等しい八つの項を除去したところから。残った項は、次の三つの部分和に整理可能:
P = 1⋅6 × [2 + 3 + 4 + 5]
Q = 2⋅5 × [1 + 3 + 4 + 6]
R = 3⋅4 × [1 + 2 + 5 + 6]
というのも、 a⋅b⋅c の形の項のうち「a, b, c のどの二つの和も 7 でない項」は除去済みなんで、残ってる項は、必ず「和が 7 になる二つの因子」を含む。つまり 1⋅6 か 2⋅5 か 3⋅4 の倍数。
ここで各 [ ] 内の和は 7 の倍数。なぜなら 1, 2, 3, 4, 5, 6 の和は 7 の倍数だが(公式①参照)、それら六つの数から「和が 7 になる二つの数」を取り除いたものが [ ] 内の四つの数なので、要するに:
[ ] 内 = (7 の倍数) − 7 = (7 の倍数)
従って、
P + Q + R = (1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4) × (7 の倍数)
結局、「1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4 も 7 の倍数であること」を示せば、全体は 72 の倍数になり、証明が終わる:
1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4 = 1⋅(7 − 1) + 2⋅(7 − 2) + 3⋅(7 − 3)
= (1 + 2 + 3)⋅7 − (12 + 22 + 32)
の右辺・第1項は 7 の倍数だし、第2項 = 3(3 + 1)(2⋅3 + 1)/6 も 7 の倍数(公式②参照)。すなわち、
1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4 = (7 の倍数) − (7 の倍数) = (7 の倍数)
であるから、(✽)を 6! 倍した整数は 72 の倍数。ゆえに(✽)の分子は 72 の倍数。∎
明快でいい感じ!
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別の例。
問題1 1⋅2⋅3 + 1⋅2⋅4 + ··· + 8⋅9⋅10 が 112 で割り切れることを示したい。ここで a⋅b⋅c の形の各項の因子は整数で、 0 < a < b < c < 11 の範囲の全部の組み合わせにわたる。
一体何項あるのか? 10 個の物から 3 個を選び出す組み合わせの数(選ぶ順序を区別しない)は 10⋅9⋅8/3! = 120。そんなにいっぱいある項を実際に足すのは面倒なので、工夫がものをいう。
解 与えられた式の a⋅b⋅c の形の各項の中から「a, b, c のどの二つも、和が 11 でないような項」を抜き出すなら、それらの和は 113 の倍数。というのも、項 1⋅2⋅3 を例に、次のように八つの項を一つの組†として、その組に属する 8 項の和を考えると:
{1 or 10} × {2 or 9} × {3 or 8} の和 = (1 + 10)(2 + 9)(3 + 8) = 113
この八つの項以外でも全く同様で、「どの二つの因子の和も 11 でないような項」は八つ一組で各組の和が 113 であり、全体として 113 の倍数、当然 112 の倍数でもある。よって、それら以外の項――すなわち「どれか二つの因子の和が 11 であるような項」――も、合計が 112 の倍数であることを示せば、問題は解決する。
† a, b, c のどの二つも和が 11 でないとき、項 a⋅b⋅c を次の八つの項から成る組の一員と見なす:
abc, abc′; ab′c, ab′c′;
a′bc, a′bc′; a′b′c, a′b′c′;
ここで x′ は 11 − x の略。これら 8 項の和は 113 に等しい:
㋐ c を含む 4 項の和 = (ab + ab′ + a′b + a′b′)c
㋑ c′ を含む 4 項の和 = (ab + ab′ + a′b + a′b′)c′
㋐ + ㋑ = (ab + ab′ + a′b + a′b′)(c + c′) = (ab + ab′ + a′b + a′b′)⋅11
= (a + b)(a′ + b′)⋅11 = 11⋅11⋅11
ちなみに、この例題の和の 120 項のうち、上記タイプの「和が 113 の 8 項の組」に属するものは 80 個、それ以外の項は 40 個。
どれか二つの因子の和が 11 であるような項は、次のように、五つの部分和に整理可能:
(1⋅10) × [2 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 9]
(2⋅9) × [1 + 3 + 4 + 5 + 6 + 7 + 8 + 10]
(3⋅8) × [1 + 2 + 4 + 5 + 6 + 7 + 9 + 10]
(4⋅7) × [1 + 2 + 3 + 5 + 6 + 8 + 9 + 10]
(5⋅6) × [1 + 2 + 3 + 4 + 7 + 8 + 9 + 10]
1, 2, ···, 10 の和は 11 の倍数(公式①)。上記の各 [ ] 内は、この 11 の倍数から二つの数(その二つの数の合計は 11)を引いたものなので、やはりそれぞれ 11 の倍数。従って、上記の 5 行を合算すると、
{1⋅10 + 2⋅9 + 3⋅8 + 4⋅7 + 5⋅6} × (11 の倍数)
となり、この { } 内も 11 の倍数であることを示せば、証明が完了する。それは易しい:
{ } 内 = 1(11 − 1) + 2(11 − 2) + 3(11 − 3) + 4(11 − 4) + 5(11 − 5)
= (1 + 2 + 3 + 4 + 5)11 − (12 + 22 + 32 + 42 + 52)
= (11 の倍数) − (11 の倍数) = (11 の倍数)
平方数の和については公式②を使った。∎
合同式を併用すると、少し見通しがいい。 mod 11 において:
1⋅10 + 2⋅9 + 3⋅8 + 4⋅7 + 5⋅6 ≡ 1(−1) + 2(−2) + 3(−3) + 4(−4) + 5(−5)
≡ −(12 + 22 + ··· + 52) ≡ 0
問題1は、実質次と同じ。
問題2 次の和の分子が 112 で割り切れることを示したい。
1/(1⋅2⋅3⋅4⋅5⋅6⋅7) + 1/(1⋅2⋅3⋅4⋅5⋅6⋅8) + ··· + 1/(4⋅5⋅6⋅7⋅8⋅9⋅10)
ただし各項の分子は 1 から 10 までの相異なる整数を七つずつ、全部の組み合わせ(順序を区別しない)で掛けたもの。
一見面倒な難問のようだが、われわれはこれを数行で解決できる立場にある。
解 問題1から、
1⋅2⋅3 + 1⋅2⋅4 + ··· + 8⋅9⋅10
は 112 の倍数。その和を 10! で割って約分すれば、問題2の和となる。言い換えると、問題2の各項の分母を通分して 10! にすると、分子は 112 の倍数(このとき分母には 10 以下の因子しかないので、約分しても分子の素因子 11 は消えない)。∎
〔参考〕 問題1の和は 18150。問題2の和は 121 ⁄ 24192。
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上の例から分かるように、このシンプルなアイデアによって、 Wolstenholme の定理のある種の拡張バージョンが証明される!
一般のケースは、そこまで簡単ではないようだが…
問題3 p を 5 以上の素数、 k を 3 以上 p − 2 以下の奇数とする。 p − 1 個の整数
{1, 2, ···, p − 1}
を k 個ずつ掛けて、それらを足し合わせた和 Wk は、 p2 で割り切れる。足し算される k 因子の積は、全種類の組み合わせ(順序を区別しない)にわたる。
問題3の内容は J. W. L. Glaisher によって発見・証明された。問題1などの例は k = 3 のケース。 k を p − 2 に固定したものが、いわゆる Wolstenholme の定理に当たる。
解 各項は k 個の因子から成る。 x が「その項の因子である k 個の数」の一つであるとき、もし p − x が「その項の因子である k 個の数」の一つではないなら、そのような因子 x を孤立因子と呼ぶことにする。簡潔化のため、任意の a について p − a を a′ と略す。
〔例〕 p = 7, k = 3 のときの項 1⋅2⋅6 において 2 は孤立因子。 1 と 6 は孤立因子ではない。この場合、もし a = 1 とすれば a′ = 6。
仮定により因子の個数 k は(3 以上の)奇数なので、「項が a⋅a′ の形の二つの因子のペアだけから成る」ということは不可能。さりながら、以下の議論では、どの項も「一つの孤立因子を除いて、残りの k − 1 個(偶数個)の因子は、その形のペアだけから成る」と考えても差し支えない。なぜならば、「その形のペアにならない因子」(すなわち孤立因子)を複数持つ項たちは、小計が p2 の倍数なので、そのような項を全部除去(ないし無視)したとしても、「全体の和が p2 の倍数か否か」の結論には影響しない。3因子の積 a⋅b⋅c の例において「a, b, c のどの二つの和も p ではない場合」を除外したのと同様。
実際、もしある項がちょうど二つの孤立因子 x, y を持つなら、その項を含む 22 個の項を一組として、その組は
{x or x′} × {y or y′} の和 = (x + x′)(y + y′) = p2
という小計を持つ。ある項がちょうど三つの孤立因子 x, y, z を持つなら、その項を含む 23 個の項を一組として、その組は
{x or x′} × {y or y′} × {z or z′} の和 = (x + x′)(y + y′)(z + z′) = p3
という小計を持つ。四つ以上の孤立因子についても同様。孤立因子が二つ以上ある場合、それが何個であっても、関連する小計は p2 の倍数。さらに、孤立因子 x を一つだけ持つ項
x(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)···
も、
x′(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)···
との 2 項の和を小計とするなら、それは p の倍数。現に:
(x + x′)(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)··· = p(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)
要するに {1, 2, ···, p − 1} の m 個ずつの積の和 Wm のうち(0 < m < p − 1)、孤立因子を一つ以上含む項だけを抜き出した部分和は、 p の倍数(ただし、証明したいのは「和が p2 の倍数」ということなので、「p の倍数」というだけでは十分でない)。
今、素数 p の半分(端数切捨て)を H = (p − 1)/2 とする。言い換えると p = 2H + 1。孤立因子を二つ以上含む項は、小計が p2 の倍数なので、そのような項については、以下の議論から除外する。
もし k が 3 なら、除外されなかった各項は、次の形式の幾つかの部分和に整理される(前記の具体例参照):
(a⋅a′) × [1 から p − 1 の各整数(a, a′ を除く)の和]
ここで a は 1 から H にわたる。 [ ] 内は p の倍数なので、積 a⋅a′ の総和
1⋅1′ + 2⋅2′ + ··· + H⋅H′
が p の倍数であることを示せば、このケースの証明は終わる。既に見たように、それは易しい(下記では、一般のケースに含めて、再証明する)。
もし k が 5 なら、除外されなかった各項は、次の形式の幾つかの部分和に整理される:
(a⋅a′)(b⋅b′) × [1 から p − 1 の各整数(a, a′, b, b′ を除く)の和]
ここで a, b は 1 ≤ a < b ≤ H の範囲の全整数にわたる。 [ ] 内は p の倍数なので、 4 因子の積 a⋅a′⋅b⋅b′ の総和 U4 も p の倍数であることを示せば、このケースの証明は終わる。そして U4 は、
W4 = a⋅b⋅c⋅d
の形の一般の総和(0 < a < b < c < d < p)から、「孤立因子を一つ以上含む項たち」を除去した残りに等しい。 W4 は p の倍数(Lagrange の定理)、そこから引き算される「孤立因子を含む項たち」の合計も p の倍数なので、 U4 も p の倍数。
一般に k が 3 以上の任意の奇数のとき、問題は、
(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)··· × [1 から p − 1 の各整数(a, a′, b, b′, c, c′, ··· を除く)の和]
の形の部分和に帰する。 [ ] 内は p の倍数なので、
(a⋅a′)(b⋅b′)(c⋅c′)··· の(k − 1 因子の項の)総和 Uk−1
が p の倍数であることを示せばいい(0 < a < b < c < ··· < H)。 Uk−1 は、一般の総和 Wk−1 から「孤立因子を含む項たち」を除去したもの。 Wk−1 もそこから引き算される値も p の倍数だから、 Uk−1 は確かに p の倍数。∎
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このメモは、前回の「フェラーズの定理(リー・グレイシャーによる証明)」の続きに当たり、 J. W. Lee Glaisher [7] のアイデアを参考にしている。
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2026-06-10 グレイシャーのシグマ関数
19世紀末、英国のリー・グレイシャー(Lee Glaisher)博士は、次のような妙な関数を考えた。まず 1 から h までの各整数の「r 個ずつ全部の組み合わせで掛けた積」(積の順序については区別しない)の和 Sr(h) を考える。例えば h = 4, r = 2 の場合:
S2(4) = (1⋅2 + 1⋅3 + 1⋅4) + (2⋅3 + 2⋅4) + 3⋅4 = 35
今、 h の 2 倍より大きな整数 L を固定し、上記のような各項の一つ一つの因子 x に対して、新しい因子 (L − x) を追加する。例えば 2⋅3 という項があれば、因子 (L − 2) と (L − 3) を追加し 2⋅3⋅(L − 2)⋅(L − 3) とする。――仮に L = 9 とするなら S2(4) に対応する新しい和は:
(1⋅2⋅8⋅7 + 1⋅3⋅8⋅6 + 1⋅4⋅8⋅5) + (2⋅3⋅7⋅6 + 2⋅4⋅7⋅5) + 3⋅4⋅6⋅5 = 1308
この和が σ2(4; 9) だ。
一般に r 個の因子の積 a1⋅a2···ar を全種類足したもの(各因子は 1 ≤ a1 < a2 < ··· < ar ≤ h の全整数にわたる)を Sr(h) として、そのような一つ一つの項に対応する 2r 個の因子の積
a1⋅a2···ar × (L − a1)(L − a2)···(L − ar)
の総和を σr(h; L) で表す。
ウォルステンホームの定理からの発展として、面白い冒険コースにつながるかもしれない。とりあえず入り口の部分について記す。
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1. (x + 1)(x + 2)(x + 3)(x + 4) = x4 + 10x3 + 352 + 50x + 24 の、最高次以外の係数は 5 の倍数。例外として、定数項は 5 の倍数より 1 小さい。一般に p が 3 以上の素数のとき、
ƒp(x) = (x + 1)(x + 2)···(x + p)
を展開すると、最高次以外の係数は p の倍数、ただし定数項は p の倍数より 1 小さい。この事実は既に Lagrange によって証明されていた。 Wolstenholme は研究を進め、 p が 5 以上の素数なら「1 次の係数」(最初の例では 50)が p2 で割り切れることを示した。
Wolstenholme の発見は、次の印象的な形式で表現される――「p が 5 以上の素数のとき、自然数の逆数の和
1 + 1/2 + 1/3 + ··· + 1/(p − 1)
の分子は、 p2 で割り切れる」。
Glaisher は、この種の定理に触発されてさらに深い考察を行い、関連するさまざまな現象を発見した。一例を挙げると、「1 次の係数だけでなく、 ƒp(x) の p − 2 次より小さい奇数次の係数は、どれも p2 で割り切れる」。具体例として:
S3(10) = 1⋅2⋅3 + 1⋅2⋅4 + ··· + 8⋅9⋅10
は 112 で割り切れる(この現象については、既に一応証明した: 問題1・問題3)。
Glaisher のこの研究で一つの鍵となったのが、上記の σr(h; L) であった。
Glaisher は任意の h 個の数 a1, a2, ···, ah を入力として、
σr(a1, a2, ···, ah; L)
を定義した。以下では、主に a1 = 1, a2 = 2, ···, ah = h のケース、つまり Glaisher の表記法において、
σr(1, 2, ···, h; L)
のケースを扱う。簡潔化のため、われわれはそれを σr(h; L) と略す。さらに略して σr(h) と書いてもいいのだが、後で L = 2h + 1 以外の設定も使うので、 L については独立変数としておく(今回のメモ内では、 L = 2h + 1 は h によって決まる従属変数)。
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2. 実際にこの σ を利用して、 S3(10) が 112 で割り切れることを再確認してみる。ミニチュア的な例題だが、一般論で使われるアイデアの説明を兼ねる。
S3(10) の各項は三つの数の積なので xyz の形。ここで x, y, z は、それぞれ 1 から 10 までの相異なる整数。項 xyz を次の二つの種類に分類する。
㋐ aa′b 型 x, y, z の中に和が 11 になる二つの数(それらを a, a′ とする)がある場合
㋑ abc 型 x, y, z のどの二つも和が 11 でない場合
前者の例は 1⋅2⋅9 や 3⋅7⋅8。後者の例は 1⋅2⋅3 や 3⋅7⋅9。
㋐の aa′b 型では、 aa′ は、
1⋅10 か 2⋅9 か 3⋅8 か 4⋅7 か 5⋅6
の五つのパターンのどれか(仮定により、二つの因子の和が 11 だから)。その五つのパターンの一つ一つに対して、 aa′b は、
aa′ × (1 から 10 までの整数のうち a, a′ 以外の八つのどれか)
という形を持つ。例えば aa′ = 1⋅10 とした場合、 aa′b は次の八つのどれかに当たる:
1⋅10 × 2 か 1⋅10 × 3 か 1⋅10 × 4 か 1⋅10 × 5 か
1⋅10 × 6 か 1⋅10 × 7 か 1⋅10 × 8 か 1⋅10 × 9
それら八つの項の和は:
1⋅10 × (2 + 3 + ··· + 9) = 1⋅2 × 44
なぜなら ( ) 内は 1 + 2 + 3 + ··· + 10 = 10⋅11/2 = 55 から a と a′ を引いたもの。 a と a′ は合計 11 なので、 ( ) 内 = 55 − 11 = 44。同様に aa′ = 2⋅9 の場合にも aa′b には八つの選択肢があるが、それら 8 項の和は:
2⋅9 × (55 − 2 − 9) = 2⋅9 × 44
全く同様に aa′ = 3⋅8 の場合、 aa′ = 4⋅7 の場合、 aa′ = 5⋅6 の場合にも、それぞれ八つの選択肢があって、それぞれの小計は:
3⋅8 × 44; 4⋅7 × 44; 5⋅6 × 44
結局 aa′b 型の項たちの総和は:
[1⋅10 + 2⋅9 + 3⋅8 + 4⋅7 + 5⋅6] × 44
この [ ] 内が σ1(5; 11) だ! 実際それは、 1 から 5 までの整数の「一つずつの積」(=その整数そのもの)の和
1 + 2 + 3 + 4 + 5
において、各項の因子 x に因子 (11 − x) を追加した次の和と同一:
1(11 − 1) + 2(11 − 2) + 3(11 − 3) + 4(11 − 4) + 5(11 − 5)
上記では 44 という数――その数が σ1(5; 11) に掛け算される――を成り行きで何となく導いてしまった。次のように意識して 44 を導出した方が、拡張性が高い。 aa′b 型の項に関しては、 10 個の整数から特定の a⋅a′ を選ぶと、 b の選択肢は 8 個に限られる(10 個の整数のうち 2 個は「使用済み」なので)。ところが、選択肢となるこれら 8 個の整数をうまく 2 個一組の四つの組にまとめると、それぞれの組の二つの数の和が 11 になるようにできる。
なぜなら 1 から 10 までの整数は、両端から一つずつ取って 2 個一組にすると、和が 11 の五つの組になる: {1, 10}, {2, 9}, {3, 8}, {4, 7}, {5, 6}。 a と a′ は、これら五つの組のうちのどれか一つに属する。よって a と a′ としてどの組が選択されたとしても、「和が 11 になる二つの整数の組」がちょうど四つ残る。
aa′b 型の項全体を考えると、 b は項によって 1, 2, 3, ···, 10 のどれかの値を持つ。このような b の値の合計は、各組の値の和 11 に「組の個数」を掛けたものに等しい。 b の選択肢として残っている数は (10 − 2) 個で、それらの数が 2 個ずつ一つの組になる。つまり、全部で
(10 − 2) ÷ 2
個の組がある。各組に属する二つの数の和は 11 だから、 b の値の合計は:
(10 − 2) ÷ 2 × 11
一方、積 aa′ が取り得る値の合計は σ1(5; 11) であり、便宜上、この数を σ1 と略すと、積 aa′b が取り得る値の総和は:
σ1 × (b の値その1) + σ1 × (b の値その2) + ···
= σ1 × {b の値その1 + b の値その2 + ···}
ところが、この { } 内、すなわち b が取り得る値の合計は上記の通りなので:
全パターンの aa′b の値の総和 = σ1 × (10 − 2) ÷ 2 × 11
次に㋑の abc 型の項について。今、任意の整数 n について、 n との和が 11 になるような整数を n′ で表すことにする。 abc の a としては、 1 から 10 までの 10 個の整数を自由に選べる。しかし、仮定により a, b, c は相異なり、かつ、どの二つも和が 11 ではないのだから、 a を選択すると b の選択肢は 10 − 2 に減る。 b として a と同じ数を再度選ぶことはできないし、 a′ を選ぶこともできないから(もしも b として a′ を選んだら、 a + b = 11 となって仮定に反する)。同様に、 a と b を選択すると c の選択肢は 10 − 4 に減る。 1 から 10 までの数のうち a, a′, b, b′ 以外を c として選ぶ必要があるから。
従って abc の選択肢の総数は、一応
10(10 − 8)(10 − 6)
となる。しかるに、選ぶ順序を区別しないのだから(例えば 1, 2, 3 と 1, 3, 2 と 2, 1, 3 と 2, 3, 1 と 3, 1, 2 と 3, 2, 1 は「六つの選択肢」ではなく「同一の選択」である)、重複カウントをなくすため、上記の「一応の総数」を 3! で割る必要がある:
abc の選択肢の総数 = 10(10 − 2)(10 − 4)/3! 個
この場合 23 種類、つまり 8 種類の選択肢をうまく一組にすることで、どの組も小計が 113 になるようにできる。特定の選択肢 {a, b, c} が与えられたとき、次のように「8 種類の選択肢で 1 セット」になるように組み合わせればいい:
{a, b, c}, {a, b, c′}; {a, b′, c}, {a, b′, c′};
{a′, b, c}, {a′, b, c′}; {a′, b′, c}, {a′, b′, c′}
三つの因子の積の和は、最初の四つについては:
abc + abc′ + ab′c + ab′c′ = ab(c + c′) + ab′(c + c′) = ab⋅11 + ab′⋅11 = 11a(b + b′) = 11a⋅11 = 112a
同様に、残りの四つについては 112a′ なので、八つ一組の組当たりの小計は:
112a + 112a′ = 112(a + a′) = 112⋅11
要約すると、 10(10 − 2)(10 − 4)/3! 個ある項の総和が 8 個の項につき 113 であり、つまり:
abc 型の項の総和 = 10(10 − 2)(10 − 4)/3! ÷ 8 × 113
既に見たように aa′b 型の項の総和は σ1(5; 11) × (10 − 2) ÷ 2 × 11。 S3(11) の項は aa′b 型か abc 型かのどちらかなので:
S3(11) = (10 − 2) ÷ 2 × 11⋅σ1(5; 11) + 10(10 − 2)(10 − 4)/3! ÷ 8 × 113
= (5 − 1)⋅11⋅σ1(5; 11) + [5(5 − 1)(5 − 2)/3!]⋅113
σ1(5; 11) が 11 の倍数であることを確かめるのは、難しくない。ここでは詳細を省くが、上記の最右辺の各項は――従って S3(11) は―― 112 の倍数、と結論される。
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3. 次に S5(10) = 1⋅2⋅3⋅4⋅5 + 1⋅2⋅3⋅4⋅6 + ··· + 6⋅7⋅8⋅9⋅10 を考えてみる。
aa′bb′c 型の項 aa′bb′ の部分は、和が 11 になるような二つの整数 2 ペアから成る。そのような 4 因子の総和は、
σ2(5; 11) = (1⋅10)(2⋅9) + (1⋅10)(3⋅8) + ··· + (4⋅7)(5⋅6)
に等しい。 c の部分は、 1 から 10 までの整数のうち、「a, a′, b, b′ として選択された 4 個の数」以外を選ぶ必要があるので、選択肢は (10 − 4) 個。 S3(10) の場合と同様に、可能な c の値を 2 個一組にすることで、各組の和を 11 にできる。組の個数は、 c の選択肢の個数の半分なので:
aa′bb′c 型の項の総和 = (10 − 4) ÷ 2 × 11⋅σ2(5; 11)
aa′bcd 型の項 aa′ の部分は、和が 11 になるような二つの整数 1 ペアから成る。既に見たように、そのような 2 因子の総和は、
σ1(5; 11) = 1⋅10 + 2⋅9 + ··· + 5⋅6
に等しい。 b の部分は、 1 から 10 までの整数のうち、「a, a′ として選択された 2 個の数」以外を選ぶ必要があるので、選択肢は (10 − 2) 個。 c の部分は「a, a′, b, b′ として選択された 4 個の数」以外を選ぶ必要があるので、選択肢は (10 − 4) 個。同様に d の選択肢は (10 − 6) 個。選択順序が違うだけの重複カウントをなくすため、選択肢を単純な掛け算で済ませず 3! で割る必要がある。
さて bcd の形の積(三つの因子のどの二つの和も 11 ではない)は、既に見たように、 23 個つまり 8 個を一組にすることで、各組の和を 113 にできる。組の個数は選択肢の個数の 23 分の 1 なので:
aa′bcd 型の項の総和 = (10 − 2)(10 − 4)(10 − 6)/3! ÷ 23 × 113⋅σ1(5; 11)
abcde 型の項 項の因子 a, b, c, d, e のうち、どの二つも和が 11 ではない。 a の選択肢は 10 個、 b の選択肢は (10 − 2) 個、 c の選択肢は (10 − 4) 個、 d の選択肢は (10 − 6) 個、 e の選択肢は (10 − 8) 個。 a を選ぶと a と a′ が選べなくなり、残りから b を選ぶと a, a′, b, b′ が選べなくなり、等々なので、因子を一つ選ぶたびに、選択肢の個数は 2 ずつ減る。
abcde 型の積は 25 個つまり 32 個を一組とすることで、各組の和を 115 にできる。一つの組は、次の形式の 25 個の積から成る:
{a or a′}⋅{b or b′}⋅{c or c′}⋅{d or d′}⋅{e or e′}
組の個数は選択肢の個数の 25 分の 1 なので:
abcde 型の項の総和 = 10(10 − 2)(10 − 4)(10 − 6)(10 − 8)/5! ÷ 25 × 115
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4. N = 2h を 6 以上の偶数として、 S5(N) を考える。この場合、和が L = N + 1 = 2h + 1 になるような二つの整数が「ペア」になる。つまり、任意の整数 a に対して a′ とは L − a のこと。
aa′bb′c 型の項 aa′bb′ の部分は、和が L になるような二つの整数 2 ペアから成る。そのような 4 因子の総和は、
σ2(h; L) = (1⋅1′)(2⋅2′) + (1⋅1′)(3⋅3′) + ··· + ((h − 1)⋅(h − 1)′)(h⋅h′)
に等しい。 c の部分は、 1 から N までの整数のうち、「a, a′, b, b′ として選択された 4 個の数」以外を選ぶ必要があるので、選択肢は (N − 4) 個。可能な c の値を 2 個一組にすることで、各組の和を L にできる。組の個数は、 c の選択肢の個数の半分なので:
㋕ aa′bb′c 型の項の総和 = (N − 4) ÷ 2 × L⋅σ2(h; L)
aa′bcd 型の項 aa′ の部分は、和が L になるような二つの整数 1 ペアから成る。そのような 2 因子の総和は、
σ1(h; L) = 1⋅1′ + 2⋅2′ + ··· + h⋅h′
に等しい。 b の部分は、 1 から N までの整数のうち、「a, a′ として選択された 2 個の数」以外を選ぶ必要があるので、選択肢は (N − 2) 個。 c の部分は「a, a′, b, b′ として選択された 4 個の数」以外を選ぶ必要があるので、選択肢は (N − 4) 個。同様に d の選択肢は (N − 6) 個。
さて bcd の形の積は、 23 個を一組にすることで、各組の和を L3 にできる。組の個数は選択肢の個数の 23 分の 1 なので:
㋖ aa′bcd 型の項の総和 = (N − 2)(N − 4)(N − 6)/3! ÷ 23 × L3⋅σ1(h; L)
abcde 型の項 項の因子 a, b, c, d, e のうち、どの二つも和が L ではない。 a の選択肢は N 個、 b の選択肢は (N − 2) 個、 c の選択肢は (N − 4) 個、等々。
abcde 型の積は 25 個を一組とすることで、各組の和を L5 にできる。組の個数は選択肢の個数の 25 分の 1 なので:
㋗ abcde 型の項の総和 = N(N − 2)(N − 4)(N − 6)(N − 8)/5! ÷ 25 × L5
S5(N) は㋕㋖㋗の和。 2 や 23 や 25 での割り算を分子と約分(N = 2h に留意)するとともに、最初の項に「分母 1」と「1 乗」(どちらも有っても無くても同じ)を導入すると:
(N − 4) ÷ 2 × L⋅σ2(h; L) + (N − 2)(N − 4)(N − 6)/3! ÷ 23 × L3⋅σ1(h; L) + N(N − 2)(N − 4)(N − 6)(N − 8)/5! ÷ 25 × L5
= [(h − 2)/1!]⋅L1⋅σ2 + [(h − 1)(h − 2)(h − 3)/3!]⋅L3⋅σ1 + [h(h − 1)(h − 2)(h − 3)(h − 4)/5!]⋅L5⋅σ0
簡潔化のため σj(h; L) を σj と略し、末尾に飾りの σ0 を付けた(ここでは、入力と無関係に σ0(h; L) = 1 と約束する)。
この場合、最初の項にある分子は、(整数の)因子 h − 2 を持つ。次の項の分子では、因子が 2 個増える(最初の因子より 1 大きい因子と 1 小さい因子が)。そのまた次の項の分子では、再び因子が 2 個増える(最初の因子より 2 大きい因子と 2 小さい因子が)。
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5. より一般的に Sk(N) を考えてみたい。すなわち 1 から N までの整数の「k 個ずつの積」の和。ただし N = 2h を偶数、 k = 2t + 1 を奇数とし、前者は後者より大きいとする。この場合も、和が L = N + 1 = 2h + 1 になるような二つの整数が「ペア」になる。
aa′bb′cc′··· x 型の項 aa′bb′cc′··· の部分は、和が L になるような二つの整数 t ペアから成る。そのような 2t 因子の総和は、
σt(h; L)
に等しい。 x の部分は、 1 から N までの整数のうち、「a, a′, b, b′, c, c′, ··· として選択された 2t 個の数」以外を選ぶ必要があるので、選択肢は (N − 2t) 個。可能な x の値を 2 個一組にすることで、各組の和を L にできる。組の個数は、 c の選択肢の個数の半分なので:
㋚ aa′bb′cc′···x 型の項の総和 = (N − 2t) ÷ 2 × L⋅σt(h; L)
aa′bb′···xyz 型の項 aa′bb′··· の部分は、和が L になるような二つの整数 t − 1 ペアから成る。そのような 2(t − 1) 因子の総和は、
σt−1(h; L)
に等しい。 x の部分は、 1 から N までの整数のうち、「a, a′, b, b′, ··· として選択された 2t − 2 個の数」以外を選ぶ必要があるので、選択肢は (N − 2t + 2) 個。 y の部分の選択肢は 2 個減るので(x, x′ が選択不可になるから)、 (N − 2t) 個。同様に z の選択肢は (N − 2t − 2) 個。
xyz の形の積は、 23 個を一組にすることで、各組の和を L3 にできる。組の個数は選択肢の個数の 23 分の 1 なので:
㋛ aa′bb′···xyz 型の項の総和 = (N − 2t + 2)(N − 2t)(N − 2t − 2)/3! ÷ 23 × L3⋅σt−1(h; L)
Sk(N) = S2t+1(2h) は、㋚㋛等の和だから:
Sk(N) = (N − 2t) ÷ 2 × L⋅σt(h; L) + (N − 2t + 2)(N − 2t)(N − 2t − 2)/3! ÷ 23 × L3⋅σt−1(h; L) + ···
= [(h − t)/1!]⋅L1⋅σt + [(h − t + 1)(h − t)(h − t − 1)/3!]⋅L3⋅σt−1 + [(h − t + 2)(h − t + 1)(h − t)(h − t − 1)(h − t − 2)/5!]⋅L5⋅σt−2 + ···
ただし σj(h; L) を σj と略した。
h − t を μ と置くと、式が簡潔になる(実質的内容は同一):
S2t+1(2h) = [μ/1!]⋅L1⋅σt + [(μ + 1)μ(μ − 1)/3!]⋅L3⋅σt−1 + [(μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)/5!]⋅L5⋅σt−2 + ···
分子が「中心から上と下へ広がっていく階乗」というところが、特徴的。なかなか美しい。
あるいは、同じことだが:
S2t+1(2h) = [μ/1!]⋅L1⋅σt + [μ(μ2 − 12)/3!]⋅L3⋅σt−1 + [μ(μ2 − 12)(μ2 − 22)/5!]⋅L5⋅σt−2 + ···
Glaisher 自身は、上記のタイプの表記法を採用している([7], §13, ii)。
仮に記号 a↓m によって、 a から始まり 1 ずつ小さくなる m 個の数の積
a(a − 1)(a − 2)···(a − m + 1)
を表すなら、
S2t+1(2h) = [μ↓1⋅L1⋅σt/1!] + [(μ + 1)↓3⋅L3⋅σt−1/3!] + [(μ + 2)↓5⋅L5⋅σt−2/5!] + ···
と書くこともできる。
あるいは、記号 a⇅m によって、 a を中央とする連続 2m + 1 個の数の積
(a + m)···(a + 2)(a + 1)a(a − 1)(a − 2)···(a − m)
を表すなら:
S2t+1(2h) = [μ⇅0⋅L1⋅σt/1!] + [μ⇅1⋅L3⋅σt−1/3!] + [μ⇅2⋅L5⋅σt−2/5!] + ···
これらの表現は形式的には無限個の項を持つが、実質的には有限個の項の和。なぜなら、分子の最小因子は項ごとに 1 小さくなるので、やがて因子 0 が生じその項以降は値が 0。 σ0 は 1 で、 r < 0 なら σr は 0、と約束しておく(これも足し算打ち切りの引き金となり得る)。
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今回の公式(N が偶数で k が奇数の場合)だけでも、それなりに興味深いが、少なくとも k が偶数の場合とセットにしないと中途半端で、実際問題、あまり役立たないだろう。もう少し準備が必要。(続く)
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2026-06-11 グレイシャーのシグマ関数(その2) 735 = 7⋅3⋅5⋅7
1, 2, 3, 4, 5, 6 の六つの数から三つの数を選ぶ方法は、順序の違いを無視すると 20 通りある。
1⋅2⋅3, 1⋅2⋅4, 1⋅2⋅5, 1⋅2⋅6
1⋅3⋅4, 1⋅3⋅5, 1⋅3⋅6
1⋅4⋅5, 1⋅4⋅6
1⋅5⋅6
2⋅3⋅4, 2⋅3⋅5, 2⋅3⋅6
2⋅4⋅5, 2⋅4⋅6
2⋅5⋅6
3⋅4⋅5, 3⋅4⋅6
3⋅5⋅6
4⋅5⋅6
これら 20 種類の「三つずつの積」を全部足すと、和は 735。この 735 という数は 50 × 15 = 750 より、ちょうど 15 小さい。つまり 735 = 49 × 15 であり、 72 で割り切れる。実は、このような「1 から N までの数」の「三つずつの積」の和は、 N より 1 大きい数(それを p とする)が 5 以上の素数なら、いつでも p2 で割り切れる。例えば「1 から 10 までの数」の「三つずつの積」の和は 112 で割り切れる。
より一般的に「奇数個ずつの積」の和(総和)は、同様の法則に従う――例えば「1 から 10 までの数」の「五つずつの積」の和も、「七つずつの積」の和も、「九つずつの積」の和も、それぞれ 112 で割り切れる。「1 から 12 までの数」の「三つずつ(あるいは五つずつ、七つずつ、等々)の積」の和は 132 で割り切れる。「1 から 16 までの数」の「三つずつ(あるいは五つずつ、等々)の積」の和は 172 で割り切れる。
これは「ウォルステンホームの定理」の一種の拡張。「グレイシャーのシグマ関数」を使うとその証明はシンプルだが、ツールとなる「シグマ関数」の導入が少し難しい(そこが面白い、ともいえる)。
「1 から N までの数」の「k 個ずつの積」の和 Sk(N) を σ1, σ2 等々の部分和に分けられる――という事実が鍵。前回、 k が奇数の場合について記した。今回は k が偶数の場合について記し、上記定理を証明する。
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6. 前回の続き。 N = 2h を偶数とする。 1 から N までの整数の「k 個ずつの積」の和 Sk(N) を考える。ただし k = 2t も偶数とする。
例えば S4(10) において aa′bb′ 型の項の総和は:
σ2(5; 11)
aa′bc 型の項の総和は:
8⋅6/2! ÷ 22 × 112 × σ1(5; 11)
abcd 型の項の総和は:
10⋅8⋅6⋅4/4! ÷ 24 × 114
一般に S2t(2h) について、各項の 2t 個の因子の中に「和が L = 2h + 1 のペア」(二つの因子)がいくつあるかに応じて、部分和を考える(そのようなペアになる因子を「非孤立」、ペアにならない因子を「孤立」と形容する)。
ペア数 t の項(非孤立因子 2t 個、孤立因子 0 個)の総和は:
σt(h; L)
ペア数 t − 1 の項(非孤立因子 2t − 2 個、孤立因子 2 個)の総和は:
(2h − 2t + 2)(2h − 2t)/2! ÷ 22 × L2 × σt−1(h; L)
= (h − t + 1)(h − t)/2! × L2 × σt−1(h; L)
このような一つ一つの項には、孤立因子がちょうど 2 個含まれる。第一の孤立因子 x の選択肢は、「未使用」の数値の個数 N − (2t − 2) に等しい。 N = 2h なので 2h − 2t + 2 に当たる。第二の孤立因子 y の選択肢は 2 個減少。なぜなら x は第一の孤立因子として「使用済み」だし x′ も選択不可(もしも y として x′ を選択したら x と y は非孤立ペアになってしまい、仮定に反する)。
ペア数 t − 2 の項(非孤立因子 2t − 4 個、孤立因子 4 個)の総和は:
(2h − 2t + 4)(2h − 2t + 2)(2h − 2t)(2h − 2t − 2)/4! ÷ 24 × L4 × σt−2(h; L)
= (h − t + 2)(h − t + 1)(h − t)(h − t − 1)/4! × L4 × σt−2(h; L)
このような項には、孤立因子がちょうど 4 個含まれる。第一の孤立因子の選択肢は、「未使用」の数値の個数 N − (2t − 4) に等しい。第二の孤立因子の選択肢は 2 個減少。第三の孤立因子の選択肢は、さらに 2 個減少。等々。
以下同様なので、 h − t を μ と置き σj(h; L) を σj と略すと:
S2t(2h) = σt
+ [(μ + 1)μ/2!]⋅L2⋅σt−1
+ [(μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)/4!]⋅L4⋅σt−2
+ [(μ + 3)(μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)/6!]⋅L6⋅σt−3
+ ···
k = 2t + 1 が奇数の場合の式(§5)とまとめると:
Sk(N) の σ 表現: N = 2h が偶数の場合(Glaisher [7], §13)
〘ⅰ〙 k = 2t が偶数なら:
S2t(2h) = [μ↓0⋅L0⋅σt/0!] + [(μ + 1)↓2⋅L2⋅σt−1/2!] + [(μ + 2)↓4⋅L4⋅σt−2/4!] + ···
〘ⅱ〙 k = 2t + 1 が奇数なら:
S2t+1(2h) = [μ↓1⋅L1⋅σt/1!] + [(μ + 1)↓3⋅L3⋅σt−1/3!] + [(μ + 2)↓5⋅L5⋅σt−2/5!] + ···
ここで μ = h − t, L = 2h + 1, σj = σj(h; L)
右辺の最初の項に含まれる 0! や 1! や 0 乗や 1 乗などは、項の形式を統一するためのもの。内容的には〘ⅰ〙の第1項は σt(h; L) に等しく、〘ⅱ〙の第1項は μLσt(h; L) に等しい。
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7. σ 表現を使って、問題3の定理を再証明する。
命題2(Glaisher [7], §16) n を正整数として、
x(x + 1)(x + 2)···(x + n − 1) = xn + W1⋅xn−1 + W2⋅xn−2 + ··· + Wn−2⋅x2 + Wn−1⋅x
と置く。もし n = p が 5 以上の素数で、 r が 3 以上 p − 2 以下の奇数なら:
Wr ≡ 0 (mod p2)
Wolstenholme の定理(第1命題)の標準的証明法では、「Wp−2 は p2 で割り切れる」という補題(Wolstenholme の定理の系ともいえる)が使われる。 Glaisher はこの補題を拡張し、 Wp−2 のみならず
W3, W5, ···, Wp−4, Wp−2
がどれも p2 で割り切れることを示した。実質的な最小の例(Wp−2 以外の Wr が p2 で割り切れる)は、 n = 7 のときの W3 = 735。ちなみに、
W1 = 1 + 2 + ··· + (p − 1) = (p − 1)p/2
は、明らかに p2 で割り切れない。 W3 が p2 で割り切れることについては、平方数の和の公式を利用した直接証明も可能。
証明 r = 2t + 1 (= k), p = 2h + 1 (= L) と置く。公式〘ⅱ〙の第2項以下は p3 の倍数なので、第1項
(h − t)⋅p⋅σt(h; p)
の因子 σt(h; p) が p の倍数であることを示せばいい†。
偶数 r − 1 = 2t に関して、公式〘ⅰ〙から:
S2t(2h) ≡ σt(h; p) (mod p2)
左辺の S2t(2h) = Sr−1(p − 1) は、 n = p の場合の Wr−1 に他ならず、 Lagrange の定理から p の倍数である(仮定により 2 ≤ r − 1 ≤ p − 3 なので)。∎
† 因子 h − t (= μ) は p の倍数ではない(0 より大きく p より小さい)。実際、仮定により p > r なので h > t、ゆえに h − t > 0。一方、 3 ≤ r なので 1 ≤ t、ゆえに h − t < p − t ≤ p − 1。
技術的には「奇数 r は p − 2 以下」という制限を外しても構わない。特に r = p とした場合の Wp = 0 は、 p2 の自明な倍数(ただしこの場合 Wr−1 は p の倍数ではない: Wilson の定理)。他方において、 r = 1 とした場合の W1 は、公式〘ⅱ〙により p の倍数ではあるが、 p2 の倍数ではない。なぜなら、因子 σt(h; p) = σ0(h; p) = W0 = 1 が p の倍数ではないから。命題2の n 次式において、 W0 は最高次の係数 1 に当たり、 Wn は定数項 0 に当たる。
例 p = 7 に対する W3 つまり S3(6) は 72 で割り切れる。
N = 6, h = 3; k = 3, t = 1; μ = 3 − 1 = 2
S3(6) = 2⋅7⋅σ1(3; 7) + (3⋅2⋅1/3!)⋅73
この右辺によると W3 の項のうち、孤立因子のみを含む項の総和は 73 (= 343) で、孤立因子を一つだけ含む項の総和は 2⋅7⋅σ1。よって、 σ1 ――すなわち W2 のうち「孤立因子を全く含まない項」だけを足し合わせた部分和――が 7 の倍数であることを確かめればいい。もし直接計算するなら:
1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4 = 6 + 10 + 12 = 28 = 4⋅7
確かに 7 の倍数。
2⋅7⋅σ1 = 2⋅7⋅(4⋅7) = 8⋅72 (= 392)
∴ W3 = 73 + 8⋅72 = 15⋅72 (= 735)
あるいは公式〘ⅰ〙を使って W2 を考えると:
N = 6, h = 3; k = 2, t = 1; μ = 3 − 1 = 2
W2 = σ1 + (3⋅2/2!)⋅72 = σ1 + 3⋅72
この左辺の W2 は 7 の倍数なので σ1 も 7 の倍数。
具体的には W2 = [7 S 5] = 175 = 7⋅25
∴ σ1 = 7⋅25 − 3⋅7⋅7 = 7(25 − 21) = 28
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8. 「三つずつの積」の和の別の例。 p = 11 に対する W3 は、 112 で割り切れる。
N = 10, h = 5; k = 3, t = 1; μ = 5 − 1 = 4
S3(10) = 4⋅11⋅σ1(5; 11) + (5⋅4⋅3/3!)⋅113
この右辺によると W3 の項のうち、孤立因子のみを含む項の総和は 10⋅113 (= 13310) で、孤立因子を一つだけ含む項の総和は 4⋅11⋅σ1。よって、 σ1 が 11 の倍数であることを確かめればいい。もし直接計算するなら:
1⋅10 + 2⋅9 + ··· + 5⋅6 = 110
確かに 11 の倍数。
4⋅11⋅σ1 = 4⋅11⋅(10⋅11) = 40⋅112 (= 4840)
∴ W3 = 10⋅113 + 40⋅112 = (110 + 40)⋅112 (= 18150)
具体的な数値を求めず、単に一般原理に帰着させてもいい(下記の例参照)。
「五つずつの積」の和の例。 p = 11 に対する W5 も、 112 で割り切れる。
N = 10, h = 5; k = 5, t = 2; μ = 5 − 2 = 3
S5(10) = 3⋅11⋅σ2(5; 11) + (4⋅3⋅2/3!)⋅113⋅σ1 + (5⋅4⋅3⋅2⋅1/5!)⋅115
この右辺によると W5 の項のうち、孤立因子のみを含む項の総和は 115、孤立因子を 3 個だけ含む項の総和は 4⋅113⋅σ1、孤立因子を 1 個だけ含む項の総和は 3⋅11⋅σ2。よって、 σ2 が 11 の倍数であることを確かめればいい。
具体的な数値を求めて 11 で割り切れるか調べることは、やればできるが面倒。この場合、その必要もない。一般原理として W4 つまり S(10, 4) は 11 の倍数で、そこから除去される「孤立因子を(2 個または 4 個)含む項の総和」は 112 の倍数。実際:
N = 10, h = 5; k = 4, t = 2; μ = 5 − 2 = 3
W4 = σ2 + (4⋅3/2!)⋅112⋅σ1 + (5⋅4⋅3⋅2/4!)⋅114
この左辺の W4 は 11 の倍数なので σ2 も 11 の倍数。(続く)
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2026-06-12 グレイシャーのシグマ関数(その3)
「足すと 3 になる二つの数」(自然数のペア)の積:
1⋅2 = 2
「足すと 5 になるペア」の積の合計:
1⋅4 + 2⋅3 = 4 + 6 = 10
「足すと 7 になるペア」の積の合計:
1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4 = 6 + 10 + 12 = 28
「足すと 9 になるペア」の積の合計:
1⋅8 + 2⋅7 + 3⋅6 + 4⋅5 = 8 + 14 + 18 + 20 = 60
︙
それぞれ 12 = 1, 12 + 22 = 5, 12 + 22 + 32 = 14, 12 + 22 + 32 + 42 = 30, ··· の 2 倍に等しい。
疑問 「和が 2n + 1 のペア」の積の合計は、 12 + 22 + ··· + n2 の 2 倍に等しい。なぜ?
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9. 1 から n までの数をそれぞれ「和が L (= 2n + 1) になるような相手」と掛け算して、その積を合計すると:
1(L − 1) + 2(L − 2) + ··· + n(L − n)
= (1⋅L − 12) + (2⋅L − 22) + ··· + (n⋅L − n2)
= (1⋅L + 2⋅L + ··· + n⋅L) − 12 − 22 − ··· − n2
= (1 + 2 + ··· + n)⋅L − (12 + 22 + ··· + n2)
1乗和の公式・2乗和の公式を使うと:
= (1/2)n(n + 1)⋅L − (1/6)n(n + 1)(2n + 1)
L = 2n + 1 なので、こうなる:
= (3/6)n(n + 1)(2n + 1) − (1/6)n(n + 1)(2n + 1)
= (2/6)n(n + 1)(2n + 1)
= (1/6)n(n + 1)(2n + 1) × 2
= (12 + 22 + ··· + n2) × 2
2乗和の公式を逆向きに使った!
平方数の和の 2 倍
2, 10, 28, 60, 110, ··· については
https://oeis.org/A006331 も参照。
L = 2h + 1 とすると、 h = 1, 2, 3, 4, 5, ··· に対する σ1(h; L) は、このような数を表す。その意味は次の通り。
定数 h が与えられたとする。 h の 2 倍より大きい数(Large)を選んで L としよう。典型的には L = 2h + 1 とする――その場合、 h は「L の半分・端数切り捨て」(hanbun; half)だ。このとき「1 から N = 2h までの数」を
1, 2, ···, h
L − 1, L − 2, ···, L − h
で表現できる。例えば h = 3, N = 2h = 6, L = 2h + 1 = 7 なら:
1, 2, 3; 6, 5, 4
「1 から 6 までの数」の「二つずつの積」の和を S とすると:
S = (1⋅2 + 1⋅3 + 1⋅4 + 1⋅5 + 1⋅6)
+ (2⋅3 + 2⋅4 + 2⋅5 + 2⋅6)
+ (3⋅4 + 3⋅5 + 3⋅6)
+ (4⋅5 + 4⋅6)
+ (5⋅6)
この a⋅b の形の一つ一つの項について、掛け算される a や b を因子と呼ぶ。もしある項の中に「和が 7 になるような二つの因子」があるなら、そのようなペアの両方を(その項の)非孤立因子と名付ける。反対に、もしその項の中に「和が 7 になる相手」がないなら、それを(その項の)孤立因子と名付ける。例えば、項 1⋅5 の 1 や 5 は孤立因子、項 1⋅6 の 1 や 6 は非孤立因子。 σ1(3; 7) は「1 から 3 までの数」の「一つずつの積」(要するにその数自身)について、強制的に「和が 7 になる因子」を追加して、孤立因子を全く含まない項の和を作る:
σ1(3; 7) = 1(7 − 1) + 2(7 − 2) + 3(7 − 3) = 1⋅6 + 2⋅5 + 3⋅4
σ1 は、全パターンの項の和 S から、「孤立因子を 1 ペア含む項」だけを抜き出した部分和に当たる。冒頭の算数のようなものは、その一例。
より一般的に、何らかの定数 L を前提として、一つの項が因子 a と因子 L − a を両方含むとき、それらを(2 個の)非孤立因子と呼ぶ。 σj(h; L) という関数は、「1 から N = 2h までの数」の「j 個ずつの積」について、各項の一つ一つの因子(それを x とする)に対して因子 L − x を追加し、「孤立因子を全く含まない j ペア(2j 個の因子)から成る項」を作って、それらの項(2j 個の因子の積)の総和を出力とする。言い換えると、「2j 個ずつの積」の和 S2j(2h) から「孤立因子を全く含まない項」だけを抜き出した部分和。
非孤立因子はその性質上 2 個ずつペアで生じるので、ある項が含む孤立因子は 0 個または偶数個。
ゆえに「1 から N までの数」の「k 個ずつの積」の和は、もし k が奇数なら、どの項も(少なくとも 1 個の)孤立因子を含む。もし k が偶数なら「孤立因子を全く含まない項」が存在し得る。例えば k = 4 の場合、「孤立因子 0 個と非孤立因子 2 ペア(4 個)」から成る項があり得る。「孤立因子 2 個と非孤立因子 1 ペア(2 個)」や「孤立因子 4 個と非孤立因子 0 ペア(0 個)」という項もあり得る。
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10. k が大きいとき、 Sk(N) の各項の「孤立・非孤立因子の配分」にはいろいろなパターンが考えられる。そのようなパターンごとに部分和を考えること――それが Sk(N) の σ 表現だ。
σ 表現で重要なのは、「最初の分数の分子」。例えば N = 2h 種類の数の「k 個ずつの積」の和では、もし k = 2t + 1 が奇数なら、項が持ち得る孤立因子(それを x とする)の最小個数は 1 個。それ以外の 2t 個の因子は、非孤立因子のペアによって「使用済み」なので、 x の選択肢の総数は:
N − 2t = 2h − 2t
(選択肢は「単なる可能性」ではなく、それぞれの選択肢に対応する項が実在する。)このような(孤立因子が 1 個だけの)項を 2 個一組にして、各組の和を L の倍数にできるので:
このタイプの部分和を構成する項たちの総数 (2h − 2t)/1!
それらの項を組に分けたときの組の総数 (2h − 2t)/1! ÷ 2 = (h − t)/1!
〔注〕 「●個に一つの選択」「▲個に一つの選択」「■個に一つの選択」…のように選択を m 回繰り返すとき、もし選択の順序の違いを区別しないのなら、 m! で割り算するのはお約束。 1! での割り算は、有っても無くても同じだが。 m! は「選択順序の違い」の総数。この割り算により、「選択順序が違うだけで内容的には同一の選択」が重複カウントされなくなる。
実際の部分和を求めるには「組の個数」を L 倍するとともに(各組の和が L だから)、当然ながら、項を構成する残りの因子(2t 個の非孤立因子)も考慮する必要がある。詳細や具体例は別の場所に記したが、組ごとの和は一定なので、非孤立因子については、合算して「まとめて掛け算」できる。「まとめて掛け算」される値は、それ自身、ある種の部分和(2t 個ずつの積のうち、孤立因子を含まない項だけを集めたもの)であり σt(h; L) に他ならない。
最初の分子 h − t が決まれば、次の項以降の分子では、次々と「1 大きい数」&「1 小さい数」が因子として追加されていくだけ。見やすいように h − t の値を μ とすると:
一つ目の項の分数が μ/1!
二つ目の項では (μ + 1)μ(μ − 1)/3!
三つ目の項では (μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)/5!
等々。これらは順に 21 個が一組、 23 個が一組、 25 個が一組、等々の「組の個数」であり、実際の部分和を求めるために、順に L1⋅σt, L3⋅σt−1, L5⋅σt−2 等々が掛け算される。
さて、同じ N = 2h 種類の数の「k 個ずつの積」の和でも、もし k = 2t が偶数なら、項が持ち得る孤立因子の最小個数は 0 個で、そのような(全く孤立因子を含まない)項たちの部分和は σt(h; L) に他ならない。孤立因子(それを x, y とする)があるなら、最も少ないケースでも 2 個ある。それ以外の 2t − 2 個の因子は、非孤立因子のペアによって「使用済み」なので、 x の選択肢の総数は
N − (2t − 2) = 2h − 2t + 2
で、 y の選択肢の総数は
2h − 2t
だ。しかも、このような(孤立因子が 2 個だけの)項については、 4 個一組にして各組の和を L2 の倍数にできるので:
このタイプの部分和を構成する項たちの総数 (2h − 2t + 2)(2h − 2t)/2!
それらの項を組に分けたときの組の総数 (2h − 2t + 2)(2h − 2t))/2! ÷ 22 = (h − t + 1)(h − t))/2!
この場合も、最初と統一して μ = h − t と書くなら:
上記の分数は (μ + 1)μ/2!
次の項の分数は (μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)/4!
そのまた次の項の分数は (μ + 3)(μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)/6!
等々となり、実際の部分を求めるために、それぞれ L2⋅σt−1, L4⋅σt−2, L6⋅σt−3 等々が掛け算される。
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11. N + 1 が素数の場合が話題の中心だったこともあり、これまでは主に N = 2h が偶数の場合を考えていた。 N が奇数の場合を検討してみたい。 N = 2h + 1 と置いてもいいのだが、便宜上、 N = 2h − 1 とする。
「1 から N = 2h − 1 までの数」の「k 個ずつの積」の総和 Sk(2h − 1) は、次のようにして N が偶数の場合に帰着される。すなわち:
《1 から N までの 2h − 1 個(奇数個)の数》
1, 2, ···, h − 1, h, h + 1, h + 2, ···, 2h − 1
から「k 個ずつの積」を作る場合、これらの数から k 個の数を(全部の組み合わせで)選ぶとすると、選択される k 個の数の中には h という数が含まれるか、さもなければ、 h は含まれない(当たり前だが)。そこで、第一のオプションは、因子 h が含まれない場合だけを考えて:
《選択肢から h を除外した 2h − 2 個(偶数個)の数》
1, 2, ···, h − 1; h + 1, h + 2, ···, 2h − 1 (♯)
の中から k 個を選び、それらの積を一つの項とすること。第二のオプションは、因子 h が含まれる場合だけを考え、(♯)の偶数個の数から k − 1 個を選び、そこに k 番目の因子として h を追加すること。
第二のオプションでは、選ばれた k − 1 個の因子の積がそれぞれ h 倍される。実際には「k − 1 個の因子の積」の和を考えて、まとめて h 倍すればいい。
第一のオプションによって作られる項の総和 S♯k(2h − 2) と、第二のオプションによって作られる項の総和 h⋅S♯k−1(2h − 2) を合算すれば、「k 個ずつの積」の総和が過不足なく求まる。ここで記号 S♯m(2h − 2) は、「2h − 2 個の数」の「m 個ずつの積」の和を表す点では、通常の Sm(2h − 2) と同じ。ただし選択肢となる数は {1, 2, ···, 2h − 2} ではなく、上記の(♯)であるとする。
(♯)は 2h − 1 個の数 {1, 2, ···, 2h − 1} から {h} を除外したもの。連続する 2h − 2 個の数ではなく、真ん中に「穴」があるが、以下の議論は「穴」がない場合とほぼ同様。というのも、組み合わせのパターン数などは、組み合わされる具体的な数値とは無関係。例えば {1, 2, 3, 4, 5, 6} から二つの数を選ぶ組み合わせは 15 通り、三つの数を選ぶ組み合わせは 20 通り等々だが、 {1, 2, 3, 5, 6, 7} から二つの数・三つの数を選ぶ組み合わせ等々も全く同じ個数だし、 h = 3, L = 8 とすれば {1, 7} と {2, 6} と {3, 5} がペアになり、孤立・非孤立の概念もそのまま成り立つ。
ただし、一つ重大な違いがある。この場合、 σ では、前半の数
{1, 2, ···, h − 1}
と L = 2h を組み合わせることにより、(♯)の各数が生成される。後半の数は
{2h − 1, 2h − 2, ···, 2h − (h − 1)}
として表現される(右端の要素は h + 1 に等しい)。従って、ここで σj というのは、これまでの σj(h; L), L = 2h + 1 とは違い σj(h − 1; L), L = 2h の意味。第1の引数が h から h − 1 に変わり、 L と h の関係も異なる!
〔例〕 h = 4 とすると「1 から h − 1 までの数」は {1, 2, 3} で、このとき L = 2h = 8 を使うと {L − 1, L − 2, L − 3} = {7, 6, 5}。前者の三つの数と後者の三つの数は、順に L = 8 を基準とする非孤立ペアであり、両者を合わせると {1, 2, 3, 5, 6, 7} となる。
N が偶数の場合もそうだったが、 N が奇数の場合においても、 k が偶数か奇数かで σ 表現が異なる。以下では k が偶数の場合を扱う。 k = 2t と置く。
第一のオプションについて。その σ 表現は、恐らく
S♯2t(2h − 2) = σt + [E⋅F/2!]⋅L2⋅σt−1 + [(E + 1)E⋅F(F − 1)/4!]⋅L4⋅σt−2 + ···
のような形になるだろう。問題は、分子の未知数 E, F がどういう表現になるか?
ここでは 2h − 2 個の数から 2t 個の因子を選んで、積を作っている。右辺の最初の項は、その 2t 個の因子の中に「孤立因子が全く無い場合」(非孤立因子 t ペア = 2t 個)の部分和に当たる。次の項は、その 2t 個の中に「孤立因子が 2 個だけある場合」(非孤立因子 t − 1 ペア = 2t − 2 個)の部分和に関連している。孤立因子を x, y とすると x の選択肢は (2h − 2) − (2t − 2) = 2h − 2t 個。従って y の選択肢は 2h − 2t − 2 個。
全部で 2h − 2 個の数がある。そのうち 2t − 2 個が、非孤立因子として選択されて「使用済み」となり、残りの「未使用」の数の中から x を選ぶ必要がある。
ゆえに、二つの孤立因子 x, y の選択肢の総数は:
(2h − 2t)(2h − 2t − 2)/2! 個
それらが 4 個一組で和 L2 になるのだから、組の総数は上記の個数 ÷ 4 だ:
(h − t)(h − t − 1)/2! 個
統一表記に従い μ = h − t と置くと:
μ(μ − 1)/2!
これが第一の分数。 E の正体は μ で F の正体は μ − 1 であった! つまり:
ア S♯2t(2h − 2) = σt + [μ(μ − 1)/2!]⋅L2⋅σt−1 + [(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)/4!]⋅L4⋅σt−2 + [(μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)(μ − 3)/6!]⋅L6⋅σt−3 + ···
次に、第二のオプション h⋅S♯k−1(2h − 2) に必要な S♯k−1(2h − 2) を求める。ここでは k = 2t を偶数と仮定しているので「奇数個ずつの積」の和の公式が適用される(k − 1 = 2t − 1 は奇数)。最初に k − 1 = 2t − 1 個の因子のうち、孤立因子が 1 個だけの場合(非孤立因子 2t − 2 個 = t − 1 ペア)を扱う。 2h − 2 個の数のうち 2t − 2 個 が(非孤立ペアにより)「占有」されるので、 「1 個だけの孤立因子」の選択肢は
(2h − 2) − (2t − 2) = 2h − 2t
種類。 2 個一組で和が L だから、 h − t 種類の組が生じる(2h − 2t の半分)。つまり最初の分子は μ で、次のようになる:
イ S♯2t−1(2h − 2) = (μ/1!)⋅L1⋅σt−1 + [(μ + 1)μ(μ − 1)/3!]⋅L3⋅σt−2 + [(μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)/5!]⋅L5⋅σt−3 + ···
一つの項の因子数が k − 1 = 2t − 1 なので、そこに t ペア(2t 個)の非孤立因子を含めることはできない(t − 1 ペア = 2t − 2 因子なら可)。よって、公式の最初の項に含まれる σ は σt ではなく σt−1 だ。
目的の S2t(2h − 1) すなわち S♯2t(2h − 2)
+
h⋅S♯2t−1(2h − 2)
を求めるには、イを h 倍してアに足せばいい。 L = 2h なので(前述)、 h 倍する代わりに L/2 倍してもよく、そうするとうまくいく(ア・イを L についての多項式のように考える)。イの右辺・第1項を L/2 倍すると L についての 2 次の項
(μ/1!)⋅(1/2)⋅L2⋅σt−1
を得る。これをアの右辺・第2項に足すと(分母は等しい。分子を共通因数 μ でくくる):
[μ(μ − 1)/2!]⋅L2⋅σt−1 + (μ/1!)⋅(1/2)⋅L2⋅σt−1 = [μ⋅(μ − 1 + 1)/2!]⋅L2⋅σt−1 = [μ⋅μ/2!]⋅L2⋅σt−1 ウ
同様に、イの第2項を L/2 倍(通分のため 2L/4 倍)してアの第3項に足し、分子の共通因子でくくる:
[(μ + 1)μ(μ − 1)⋅(μ − 2 + 2)/4!]⋅L4⋅σt−2 = [(μ + 1)μ(μ − 1)⋅μ/4!]⋅L4⋅σt−2 エ
さらに、イの第3項を 3L/6 倍してアの第4項に足すと:
[(μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)⋅(μ − 3 + 3)/6!]⋅L6⋅σt−3 = [(μ + 2)(μ + 1)μ(μ − 1)(μ − 2)⋅μ/6!]⋅L6⋅σt−3 オ
生じる項のパターンは明らか。アの右辺第1項と、ウ・エ・オから、次の結論に至る。
S2t(N) の σ 表現: N が奇数 2h − 1 の場合(Glaisher [7], §14)
σt + [μ2/2!]⋅L2⋅σt−1 + [(μ + 1)μ2(μ − 1)/4!]⋅L4⋅σt−2 + [(μ + 2)(μ + 1)μ2(μ − 1)(μ − 2)/6!]⋅L6⋅σt−3 + ···
ただし σj = σj(h − 1; 2h), L = 2h, μ = h − t
〔例〕 S4(7) = 1⋅2⋅3⋅4 + 1⋅2⋅3⋅5 + ··· + 4⋅5⋅6⋅7 について。 h = 4, t = 2 なので μ = h − t = 2, L = 2h = 8。
σ2(3; 8) = 369 と σ1(3; 8) = 34
を求めることは難しくない(下記)。それを使うと:
σ2 = 369
(22/2!)⋅82⋅σ1 = 2⋅64⋅34 = 4352
(3⋅22⋅1/4!)⋅84⋅σ0 = (1/2)⋅4096⋅1 = 2048
∴ S4(7) = 369 + 4352 + 2048 = 6769
σj(3; 8) の値について。 {1, 2, 3} の一つずつの和
S1(3) = 1 + 2 + 3
を L = 8 によって「非孤立化」すると:
σ1(3; 8) = 1⋅7 + 2⋅6 + 3⋅5 = 7 + 12 + 15 = 34
同様に、「二つずつの積」の和
S2(3) = 1⋅2 + 1⋅3 + 2⋅3
を L = 8 によって非孤立化すると:
σ2(3; 8) = 1⋅2⋅7⋅6 + 1⋅3⋅7⋅5 + 2⋅3⋅6⋅5 = 84 + 105 + 180 = 369
σ 表現は Sk(N) の値を「未知数のまま」一般論的に考察し、(具体的な数値を考えることなしに)内在する剰余関係などを検討するのに役立つ。個別的に S4(7) の値(上記の合計)を知りたいだけならこのような計算は無用だが、検証を兼ねて数値例を提示した。ちなみに 6769 はスターリング数 [8 S 4] であり、
(x + 0)(x + 1)(x + 2)···(x + 7)
を展開したときの 4 次の係数に等しい。実用上は、パスカルの三角形に似た再帰的関係からも導出可能。(続く)
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