遊びの数論63 

[遊びの数論] 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 | 32 | 33 | 34 | 35 | 36 | 37 | 38 | 39 | 40
41 | 42 | 43 | 44 | 45 | 46 | 47 | 48 | 49 | 50 | 51 | 52 | 53 | 54 | 55 | 56 | 57 | 58 | 59 | 60
61 | 62 | 63

遊びの数論62』の続き。誤字脱字・間違いがあるかも。


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2026-07-08 博士の愛した公式(その3) 3⋅4⋅56⋅7

[10 S 5] ≡ 52 [10 S 6] (mod 56)

[14 S 7] ≡ 72 [14 S 8] (mod 75)

[22 S 11] ≡ 112 [22 S 12] (mod 115)

これらは Glaisher の合同式の一種。 mod p5 は一定パターンで規則的に生じるが、 mod p6 は珍しい。

意味?

[10 S 6] = 63273 を 52 倍した 1581825 と、 [10 S 5] = 269325 は、どっちの数も 56 = 15625 で割ったときの余りが同じ!ってこと(具体的には 3700 余る)。

言い換えると、両者の差
  1581825 − 269325 = 1312500 = 15625 × 84 = 56 × 84
は 56 の倍数。 84 = 12 × 7 = 3 × 4 × 7 なので、おしゃれに(?)書けば:
  52[10 S 6] − [10 S 5] = 3⋅4⋅56⋅7

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§17 次の合同式は、 Glaisher [7] の最後の節 §59 にリストアップされた10種の公式のうち最後のもの。
  [n S k] ≡ (nk/2)[n S k + 1]
参照の便宜上、これを第10公式と呼ぶことにする。

「第10公式」では、 n が奇数なら k を偶数とし、一般には n3 が法となる。ただし n = p が素数なら、 k = p − 3 の場合を除いて p4 を法とすることができる(k = p − 3 の場合には、一般の場合と同じく p3 が法)。その証明は、比較的易しい

一方 n = 2h が偶数の場合、 k を奇数とし、やはり一般には p3 が法となる。この場合も n/2 = h = p が素数なら、 k = 2p − 3 の場合を除いて p4 を法とすることができるのだが、その証明はややトリッキー。 Glaisher 自身、すぐには状況を見通せず、 k ≥ p の場合に限った証明を書き上げ、既に活字も組み上がった段階になって「k は p より小さい奇数でも構わないぞ!」というひらめきを得て、論文の末尾に追記し、本文のあちこちに脚注を追加している。

Glaisher 博士は当時 Quarterly Journal 誌の唯一の編集者だったらしく、ギリギリになって脚注追加、といった融通が利いたようだ。数表を作るようなことが大好きだったらしく、かなり楽しそう。

Glaisher は上側インデックスが 23 までの第一種スターリング数の表を自作していたので、 p = 5, 7, 11 の三つのケースについて n = 2p 場合の具体的数値を観察することができ、従って、上記の結論を初めから予想できていた可能性がある。ただ、すぐには証明を思い付かず、具体例が三つだけでは、一般的に成り立つのか、たまたま最初の三つではそうなるだけなのか断定もできないので、もやもやしていたのではないか。

任意の奇素数 p について、 Wp(2p) = [2p S p] は p の倍数――という観察を糸口にして、 Glaisher は中途半端だった証明を自然に拡張した。事実としては平明だがその論法は繊細で、 p2 で割り切れない三つの項を組み合わせると、それらの和が p2 で割り切れる、ということに基づく(§14)。そして、それを土台に Wp+1, Wp+2, ···, W2p−3 が p の倍数であることが帰納的に示される。 p の倍数だと保証された W の範囲が広がったことで、 p の倍数だと保証された σj(p − 1; 2p) の範囲も広がる(§16)。「第10公式」では、内部的に σj が因子となっているため、それが素因子 p を持つなら、法 pν の指数 ν が増える。

証明の細い道がつながったときは(エレガントかはともかく、論理的には明快)、さぞや胸のすくような思いだっただろう。

表記法(記号・文字)について。 A1, A2, ···, An−1 で (x + 1)(x + 2)···(x + n) の係数(最高次の係数 1 を A0 とする)を表すのは、 Lagrange が Wilson の定理を証明したときからの由緒ある表記法であり、 Glaisher もこの表記法を使う。われわれも同様の表記法を併用するけれど、文字 A の代わりに W を使って W1, W2 等々と記す。 Wr とは n 次式 x(x + 1)(x + 2)···(x + n) の n − r 次の係数であり、定数項は 0 なので Wn = 0。基準となる多項式の次数 n はしばしば暗黙だが、明示したい場合には Wr(n) と表記する。

Wr は「0 から n − 1 までの n 個の整数」の「r 個ずつの積」の総和に等しい。因子 0 を含む項は和に寄与しないので「1 から n − 1 までの n − 1 個の数」の「r 個ずつの積」と言ってもいい。これを Glaisher は
  Wr = Sr(1, 2, ···, n − 1)
のように記した。ここでも、時々同様の表記法を使う。ただし、同じことを簡略に
  Wr = Sr(n − 1)
と書く。スターリング数の(Knuth による)記号では、
  Wr(n) = Sr(n − 1) = [n S n − r]
に当たる。

W と S は、引数の仕様が 1 違うだけで、実質同じ関数。 Wr(6) = Sr(5), Wr(7) = Sr(6) 等々。同じ内容について二つの表記法があるのは冗長で、場合によっては紛らわしい。しかし少なくとも Glaisher の原論文の用法においては、表記の簡潔化や、ある種の一般化に役立っている面もある。もとをただせばスターリング数に(まだ)統一された表記法がないことが、このような「表記の揺れ」の一つの背景といえるだろう。

Glaisher の σ 記号の概要は次の通り(詳細)。
  σ1(1, 2, ··· , m; L) = 1⋅(L − 1) + 2⋅(L − 2) + ··· + m⋅(L − m)
  σ2(1, 2, ··· , m; L) = 1⋅2⋅(L − 1)⋅(L − 2) + 1⋅3⋅(L − 1)⋅(L − 3) + ··· + (m − 1)⋅m⋅(L − (m − 1))⋅(L − m)
つまり σj は各項が 2j 個の数の積から成る総和であり、例えば σ3(1, 2, ···, m; L) なら「1 から m までの数の三つずつの積」(それを一般的に αβγ としよう)に、 α, β, γ のそれぞれを L から引いたものを因子として追加した六つの数の積 αβγ(L − α)(L − β)(L − γ) の和。引数と無関係に σ0 = 1 と約束する。われわれは
  σj(1, 2, ··· , m; L)
を σj(m; L) と略す。実際には、
  σj(1, 2, ···, h; 2h + 1) と σj(1, 2, ···, h − 1; 2h)
の二つが(以下では後者が)常用される。省略記法ではそれぞれ σj(h; 2h + 1) と σj(h − 1; 2h) に当たる。

個々の σ 記号の具体的な和(数値)は、実際上あまり重要ではない。ある種の式の操作の結果として「σ が特定の数の倍数になることが保証される」ようなケースが、重要な鍵となり得る。

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§18 n = 2h を任意の正の偶数、 2t を 0 以上 n − 2 以下の偶数とする。 μ = h − t と置き、 σj(h − 1; n) を σj と略すと、
  (μ − 1/2)⋅n⋅S2t(2h − 1) − S2t+1(2h − 1)
   = 1/2(4μ2 − 1){[μ⋅1/3!]⋅n3⋅σt−1 + [(μ + 1)μ(μ − 1)⋅2/5!]⋅n5⋅σt−2 + ···}  ア
成り立つ(変数名を L から n に変えた)。従って、
  (μ − 1/2)⋅n⋅S2t(2h − 1) と S2t+1(2h − 1) の差
は、見掛け上 n3 = (2h)3 の倍数。しかしこの (2h)3 が持つ因子 2 の一つまたは二つは、 1/2 ないし μ⋅1/3! = μ/6 の分母と約分されて消える可能性があるから、二つの数の差アは、必ずしも (2h)3 の倍数ではない。

アが h3 の倍数であることは明らかなので、 (h − t − 1/2)⋅n⋅S2t(2h − 1) と S2t+1(2h − 1) は、(少なくとも)法 h3 の下で合同:
  (2h − 2t − 1)⋅h⋅W2t(2h) ≡ W2t+1(2h) (mod h3)  イ
  ∴ (n − 2t − 1)⋅h⋅W2t(n) ≡ W2t+1(n)

k = n − 2t − 1 と置くと 2t = n − k − 1 なので:
  khWn−(k+1)(n) ≡ Wn−k(n)
  ∴ kh [n S k + 1] ≡ [n S k] (mod h3)  ウ

これが「第10公式」のデフォルト・ケースに当たる(cf. [7], §20)。仮定により n = 2h は偶数、かつ 0 ≤ 2t ≤ n − 2 なので k は 1 以上 n − 1 以下の奇数。

もし k = n − 1 なら t = 0 なので、イの右辺は S1(2h − 1) = (2h − 1)⋅2h/2 = (2h − 1)⋅h に等しく(1 から 2h − 1 までの各数の和)、つまりイの左辺と等しい。その場合、合同式イは(従ってウは)実際には等式であり、自明。他方、 n = 2 (h = 1) なら、これらは法 1 に関する合同式であり、やはり自明。以下では自明なケースを除外して、 n を 4 以上の偶数、かつ k を 1 以上 n − 3 以下の奇数(t = 1, 2, ···, h − 1)と仮定する。

非自明な最小のケースは n = 4, k = 1 の
  1⋅2⋅[4 S 2] ≡ [4 S 1] (mod h3)
だ。 [4 S 2] = 11, [4 S 1] = 6 なので、この合同式は
  2 × 11 ≡ 6 (mod 8)
を意味し、確かに正しい(この例では、法を 24 = 16 にしても合同式が成り立つ)。

h が 3 以上の素数 p の場合、一般にはアの σt−1 などからも素因子 p が生じ、合同式イないしウは、法 h3 のみならず法 h4 の下でも成り立つ。

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§19 先に h が合成数のケースを観察しておく。

h = 4 (n = 8) の場合、ウは、次の各数が 43 = 26 で割り切れることを含意する。実際そうなっている:
  1⋅4⋅[8 S 2] − [8 S 1] = 4⋅13068 − 5040 = 47232 = 28 × 369
  3⋅4⋅[8 S 4] − [8 S 3] = 12⋅6769 − 13132 = 91988 = 29 × 133
  5⋅4⋅[8 S 6] − [8 S 5] = 20⋅322 − 1960 = 4480 = 27 × 35

h = 6 (n = 12) の場合、次の各数が 63 = 23⋅33 で割り切れねばならない。
  1⋅6⋅[12 S 2] − [12 S 1] = 6⋅120543840 − 39916800 = 26⋅33 × 395455
  3⋅6⋅[12 S 4] − [12 S 3] = 18⋅105258076 − 150917976 = 25⋅33 × 2018203
  5⋅6⋅[12 S 6] − [12 S 5] = 30⋅13339535 − 45995730 = 24⋅34 × 273295 ◎
  7⋅6⋅[12 S 8] − [12 S 7] = 42⋅357423 − 2637558 = 26⋅34 × 2387 ◎
  9⋅6⋅[12 S 10] − [12 S 9] = 54⋅1925 − 32670 = 24⋅34 × 55 ◎
いずれも十分に条件を満たす。特に◎印では、法 63 のみならず法 64 の下でも合同。追加された因子 3 の供給元(因子 2 はもともと余分にある)は、いろいろ。 k = 5 のケースでは σt−1 が 3 の倍数で、かつ μ = 3 なので、 3 を約した後で余分の因子 3 が一つ残る(t は n − k − 1 の半分に等しい。 μ は h − t に等しい)。 k = 7, 9 のケースでは σt−1 は 3 の倍数ではないが、 4μ2 − 1 が 9 の倍数で、やはり 3 を約した後で余分の因子 3 が残る。

n = 18 (h = 9) の場合、 k = 1, 7 のとき法 94 の下で「第10公式」成立。追加の因子 3 は μ または 4μ2 − 1 または σt−1 から供給される(一つは約されるので合計 3 個必要)。

n = 30 (h = 15) に至っては、ほとんどのケースで合同式が法 154 の下で成立し、法 155 の下で成立するケースも少なくない。例えば:
  25⋅15⋅[30 S 26] − [30 S 25] = 155 × 448630
この場合も追加の因子 15 に必要な素因子 3 と 5 は、 μ または 4μ2 − 1 または σt−1 から供給される。例えば上記 k = 15 の例では t = 2, μ = 13 なので
  4μ2 − 1 = (2μ + 1)(2μ − 1) = 27⋅25 = 33⋅52
であり、この部分からだけでも――n3 = (2⋅15)3 とは別に――追加の因子 152 が供給される。

h = 27 では 5 乗を超える法が生じる。
  1⋅27⋅[54 S 2] ≡ [54 S 1] (mod 278)
  3⋅27⋅[54 S 4] ≡ [54 S 3] (mod 277)
  5⋅27⋅[54 S 6] ≡ [54 S 5] (mod 276)
  7⋅27⋅[54 S 8] ≡ [54 S 7] (mod 276)

このように、 h が素数でなくても「第10公式」が h4 やそれより高次の法において成り立つことは、珍しくない。むしろ h が合成数だからこそ、「特定の一つの因子が h = p⋅p′⋅p″··· の倍数でなくても、別々の因子から素因子 p, p′, p″ 等々が供給され、全体として因子 p が生じる」ということが起こり得る。対照的に、もし h = p が素数ならどれかの因子が p の倍数でない限り因子 p は生じ得ず、その結果として――「第10公式」の法は一定の規則に従って h4 ないし h5 になり、デフォルトの h3 よりは高次であるものの―― h5 を超える法の下で公式が成り立つことは(h が合成数の場合と比べて)起こりにくいかもしれない。

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§20 h が素数 p の場合、式ア(§18)において、もし 1 ≤ t − 1 ≤ p − 2 かつ t − 1 ≠ (p − 1)/2 ならば――すなわち、もし 2 ≤ t ≤ p − 1 かつ t ≠ (p + 1)/2 ならば―― σt−1 からも因子 p が供給されるため(補題7)、そのとき「第10公式」は法 p4 の下で成り立つ。

定義により奇数 k は = n − 2t − 1 = 2p − 2t − 1 なので、 t に関する上記の条件は、奇数 k についての条件 1 ≤ k ≤ 2p − 5 かつ k ≠ p − 2 と同値。特に k が = 2p − 3 の場合、 σt−1 から追加の因子 p は供給されない(k = 2p − 1 の場合は、因子 p の個数を考えるまでもなく、公式は自明な等式となる: §18)。さらに p = 3 のときには条件を満たす k は存在しない。

t = (p + 1)/2 の場合(k = p − 2)、 σt−1 からは因子 p は供給されないものの、 μ = (p − 1)/2 なので 4μ2 − 1 = (2μ + 1)(2μ − 1) から因子 p が一つ供給され、結局、その場合、公式は法 p4 の下で成り立つ。一方、 k = p の場合、 t = (p − 1)/2, μ = (p + 1)/2 なので、 σt−1 からも 4μ2 − 1 からも因子 p が供給され、公式は法 p5 の下で成り立つ。

要約すると、次の通り。

定理5(上側偶数のスターリング数に関する合同式: cf. Glaisher [7], §53) n = 2h が 4 以上の偶数で、 k が 1 以上 n − 3 以下の奇数のとき、法 h3 の下で次の合同式が成り立つ。
  kh [n S k + 1] ≡ [n S k]
もし h が 5 以上の素数 p で k が n − 5 以下なら、同じ合同式が法 p4 の下で成り立つ。特に k = p なら、この合同式は法 p5 の下で成り立つ。

〔注〕 n = 4, 6 の場合、例外的な状況が起きるが、結論としては命題は正しい。

h = p = 7, n = 14 の例。
  1⋅7⋅[14 S 2] − [14 S 1] = 74 × 55140480
  3⋅7⋅[14 S 4] − [14 S 3] = 74 × 166593960
  5⋅7⋅[14 S 6] − [14 S 5] = 74 × 44484154
  7⋅7⋅[14 S 8] − [14 S 7] = 75 × 346632
  9⋅7⋅[14 S 10] − [14 S 9] = 74 × 31746
  11⋅7⋅[14 S 12] − [14 S 11] = 73 × 572

定理5はあくまで「最低限の保証」であり、実際にはもっと高い次数の法で合同式が成り立つこともある。次の「6乗数の法」の合同式は印象的。
  1⋅5⋅[10 S 2] − [10 S 1] = 54 × 7632
  3⋅5⋅[10 S 4] − [10 S 3] = 54 × 15492
  5⋅5⋅[10 S 6] − [10 S 5] = 56 × 84
  7⋅5⋅[10 S 8] − [10 S 7] = 53 × 168

素数 p = 37 の場合、 k = p のとき法 p5 の下で合同式が成り立つのは定理の通りだが、それ以外に k = 3 と k = 39 の場合にも、法 p5 が有効。 p = 59 の場合、 k = p の他 k = 13, 71 でも法 p5 が有効。のみならず、次の合同式は法 p6 の下でも成立する。
  71⋅59⋅[118 S 72] ≡ [118 S 71] (mod 596)

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2026-07-11 博士の愛した公式(その4) 田舎の村よ[1764 = 422

デンマークの Niels Nielsen が「スターリング数」という用語を使い始めたのは20世紀の初めだが、19世紀末にも(そういう呼び名がなかっただけで)「スターリング数」は既に研究されていた。 Nielsen 自身の1893年の論文は、その嚆矢こうしだろう。英国の J. W. L. Glaisher の1900年の論文 [7] は、当時の知見の集成。大部分は Glaisher 自身による新発見。

Glaisher [7] は、有名な「ウォルステンホーム(Wolstenholme)の定理」に触発されている――この定理には軽妙なパズルのような要素があって、好奇心を刺激する。
  1/1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 = 25/12
の分子 25 は 52 の倍数です、なぜでしょう? というのが最小の具体例。定理の内容がシンプルで分かりやすく、簡単に証明できそうに見えて、それほど簡単でもない。 Dickson の数論史に記載があるだけでも当時、既に10種類くらいの証明がいろいろな研究者によって発表された。21世紀の現在でも、新証明が公表されている。

Wolstenholme の定理は 1862年に Quarterly Journal 誌に掲載された。1870年代に Glaisher は同誌の編集者となり、 [7] もこのジャーナルに掲載されることになる。しかも、巻頭35ページ! 編集者権で雑誌を私物化してるふしもあるけど(笑)、内容が興味深い上、恐らく人類史上初めて n = 23 までスターリング数の表を掲載した力作(n = 9 までの表は、スターリング自身によって1730年に出版されてい)。

† 20世紀後半の Abramowitz & Stegun の数表でも n = 25 まで。
https://archive.org/details/handbookofmathem1964abra/page/833/mode/1up

‡ 他の編集者が徐々に抜け Glaisher は実質的に「一人編集長」となっていた(Messenger of Mathematics 誌に関しても同様だった)。
https://mathshistory.st-andrews.ac.uk/Obituaries/Glaisher_RAS/

¶ James Stirling (1730), Methodus differentialis: sive Tractatus de summatione et interpolatione serierum infinitarum, p. 11
https://archive.org/details/10053880bsb/page/11/mode/1up

スターリング数のもともとの定義は単純。 x(x + 1)(x + 2)···(x + m) のような積を展開したらどうなるか? その係数を問題にする。例えば、
  x(x + 1)(x + 2)(x + 3)(x + 4) = x5 + 10x4 + 35x3 + 50x2 + 24x
の右辺の係数 1, 10, 35, 50, 24 の一つ一つがスターリング数の例。このような n 次式の k 次の項の係数は、現代の記号では [n S k] に当たる(読み方は「n サイクル k」)。例えば、上の5次式で x2 の係数は 50 なので [5 S 2] = 50 と。で、この [5 S 2] で表される数が 52 の倍数なのは偶然ではなく、上掲の「ウォルステンホームの定理」の分子が 52 の倍数であることと同値。分かってみると当たり前なんだけど、最初は「な~るほど!」と結構、感動する。

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§21 Wolstenholme の定理に関連して、分数を足し算するために、例えば次のような(ひどく機械的な)通分をしたとしよう:
  1/1 + 1/2 + 1/3 + 1/4 = (2⋅3⋅4)/(1⋅2⋅3⋅4) + (1⋅3⋅4)/(1⋅2⋅3⋅4) + (1⋅2⋅4)/(1⋅2⋅3⋅4) + (1⋅2⋅3)/(1⋅2⋅3⋅4)  カ

カの右辺の各項の分子は、 1, 2, 3, 4 の四つの数を三つずつ(可能な全部のパターンで)掛けたもの。実際、 1, 2, 3, 4 の四つの数のそれぞれを「因子」と呼ぶなら、四つの因子の積 1⋅2⋅3⋅4 である分母と比べたとき、右辺の一つ目の分子には因子 1 が無く、二つ目の分子には因子 2 が無く、三つ目の分子には因子 3 が無く、四つ目の分子には因子 4 が無い。

カの右辺は、左辺を通分したもの。逆に言えば、左辺を約分すると右辺になる。よって、当然上記の単純な関係が成り立つ。これらの分子(三つの因子の積)たちが「1 から 4 までの数を三つずつ掛けたもの」を全種類、過不足なく含んでいることは明らか。

一方、 1, 2, 3, 4 を解とする4次方程式を考えると:
  (x − 1)(x − 2)(x − 3)(x − 4) = x4 − 10x3 + 35x250x + 24  キ

解と係数の関係から、「解 1, 2, 3, 4 を三つずつ掛けた積の和」は、絶対値において、 1 次の係数 50 と一致する(正確に言うと、キの右辺の1次の項の係数は、「−1, −2, −3, −4 を三つずつ掛けた積の和」なので、負の数たちの和になるが、「1, 2, 3, 4 を三つずつ掛けた積の和」と符号が違うだけ)。言い換えると、カの右辺の分数の足し算の結果は、
  (50)/(1⋅2⋅3⋅4)
となる(約分前の機械的計算としては)。この分子が、分母の最大の因子 4 より 1 大きい素因子 p = 5 を持つとしても(実際、二つ持つのだが)、分母には 4 以下の因子しかないのだから、その素因子 p が約分されて消える可能性はない。

要するに、この場合、約分のことを気にせず、「機械的に通分して足し算したら分子が p2 の倍数になるか?」という点だけを問題にすればいい。そして「機械的に足し算した分子」とは 1 から p − 1 までの数の「p − 2 個ずつの積」の和に他ならない。

さて、係数の符号の違いを無視するなら、上記の4次式キは、スターリング数を定義する次の式と、実質同じ:
  x(x + 1)(x + 2)(x + 3)(x + 4) = x5 + 10x4 + 35x3 + 50x2 + 24x  ク

結局、カの和の分子が 52 の倍数になる、という主張は、キの x の係数が 52 の倍数になる、という主張と同値であり(符号の違いを無視すれば、後者は、約分前の前者と同一の整数)、後者の主張は、スターリング数の記号を使うと、
  [5 S 2]
が 52 の倍数ということ。

同様に、
  1/1 + 1/2 + 1/3 + ··· + 1/6
の分子が 72 の倍数になる、という主張は、
  x(x + 1)(x + 2)··· (x + 6) = x7 + 21x6 + 175x5 + 735x4 + 1624x3 + 1764x2 + 720x
の x2 の係数 [7 S 2] = 1764 は 72 の倍数、という主張と同値。実際、分数の足し算を機械的な通分によって行うなら、分子は 1 から 6 までの数の「五つずつの積」の和になり、それは根と係数の関係から、この 1764 という数になる。


1764
(田舎の村よ)

平方数 422
441 × 4
(ヨヨイのヨイ)
441
平方数 212
= 13 + 23+ 33
+ 43 + 53 + 63


果たして、定理の予言通り 1764 は 422 = (6⋅7)2 なので 72 で割り切れる。ところで、この平方数の「普通」の暗算法は
  (40 + 2)2 = 1600 + 2⋅40⋅2 + 22
だが、代わりに、こう考えてもいいだろう:
  62 × 72 = 36 × (50 − 1) = 36 × 50 − 36 = 1800 − 36
あるいは単に 212 = 441 の 4 倍。

これは「ウォルステンホームの定理」を「スターリング数についての命題」に言い換えただけで、証明したわけではない――実際の証明には多少のトリックが必要。ウォルステンホームの定理だけが問題なら、上記のような「整数を係数とする多項式」をそのまま考える代わりに、それを mod p ないし mod p2 で考えてフェルマーの小定理と組み合わせるのが早道かと(別のメモ参照)。以下では、ウォルステンホームの定理は「証明すべき目標・ゴール」ではなく「スタート地点」となる。

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§22 Glaisher は次のことを観察した。 p が 5 以上の素数のとき、 [p S 2] だけでなく、 p − 3 以下の任意の正の偶数 k に対して [p S k] は p2 で割り切れる。例えば:
  [7 S 2] = 1764 = 72 × 36
  [7 S 4] = 735 = 72 × 15

既述のように、記号 [7 S k] は、7次式
  (x + 0)(x + 1)(x + 2)··· (x + 6) = x7 + 21x6 + 175x5 + 735x4 + 1624x3 + 1764x2 + 720x1
の xk の係数に当たる。この左辺を定義通りに真面目に展開するのは、困難ではないが面倒くさい。ここでは計算問題を考えているわけではないので、具体的な計算法については気にせず、何らかの方法でスターリング数(つまり上記のような係数)は既に求まっている、と想定する。

Glaisher は σr なる関数を定義し、それを使って上記の事実を一般的に証明した。約7年前に Nielsen も、同じ命題を記してい―― Nielsen が「スターリング数」という用語の創始者であることは、偶然ではあるまい。誰が最初の発見者かはさておき、任意の偶数 k = 2, 4, ···, p − 3 について、
  [p S k] ≡ 0 (mod p2)
が成り立つ。そしてその観点から見ると、 Wolstenholme の定理は「その一例」(k = 2 の場合)。 p が素数のとき、 1 < k < p の範囲の任意の整数 k について
  [p S k] ≡ 0 (mod p)
が成り立つことは、既に Lagrange によって証明されていた(Wilson の定理を証明する手段として)。 k が同じ範囲にある偶数のとき、 k = p − 1 のケースを除けば、法を p から p2 に上げられる――というのが Nielsen ないし Glaisher の発見であり、 k = 2 のケースが(本質的には) Wolstenholme の定理に当たる。

Glaisher はそこで止まらず、さらに p が 5 以上の素数の場合の [2p S k] について検討した。そこで思わぬアクシデントが…。 Glaisher が最初に記した命題は、有効な k の範囲が本来の半分程度という中途半端なものだった。例えば、 p = 5 の場合、
  [2p S k] ≡ 0 (mod p2)
は k = 3, 5, 7 に対して成り立つ(この場合 k は奇数)。ところが Glaisher は、 k = 7 の場合についてしか証明を与えなかった。50節から成るかなり長い論文を書き終え、出版準備中にそのことに気付き、 Glaisher は急きょ第51~59節を追記、もともとの50節のあちこちに脚注を付け加えた。「構成は継ぎはぎだらけだが、全体としては結果オーライ」と言いたいところだが、このどさくさが一因となって、 Glaisher は、
  kp [2p S k + 1] ≡ [2p S k]
が mod p4 で成り立つ条件を確定させながら、「特に k = p なら、この合同式は mod p5 で成り立つ」という「一番おいしい部分」を書く機会を失ってしまったらしい!

† Niels Nielsen (1893), “Om Potenssummer af hele Tal” [整数のべき和について], Nyt Tidsskrift for Matematik, Afdeling B, 4, p. 4, Eq. (17)
Glaisher [7] は1900年。命題自体は Messanger (1889), 28 で報告された。二人の研究は異なる文脈のもので、 Glaisher は Nielsen の論文のことを知らなかったようだ。

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§23 自明なスターリング数。 n を 1 以上の整数、 k を 0 以上 n 以下の整数とする。スターリング数の定義に使われる多項式は:
  n = 1 ⇒ x = 1x1 + 0
  n = 2 ⇒ x(x + 1) = 1x2 + 1x1 + 0
  n = 3 ⇒ x(x + 1)(x + 2) = 1x3 + 3x2 + 2x1 + 0
   ︙
一般に、右辺の中間の項を略すなら、
  x(x + 1)(x + 2)···(x + n − 1) = 1xn + Axn−1 + ··· + Bx1 + 0
と書くことができる(A, B は何らかの係数)。いずれの場合も、定数項(つまり x0 の係数)は、もちろん 0 なので、定義によって、
  [n S 0] = 0  ケ
であり、 n 次の項(つまり 1xn) の係数は、もちろん 1 なので、
  [n S n] = 1  コ
である。さらに、根と係数の関係から xn-1 の係数 A は、全部(n 個)の根の和の符号を変えたもの、つまり
  −[0 + (−1) + (−2) + ··· + (−n + 1)] = 0 + 1 + 2 + ··· + (n − 1)
   = (n − 1)n/2
であり(この多項式は x + α の形の1次式の積。符号を細かく検討するまでもなく、 α は負でないから、全係数が負でないことは明白)、同様に、 x1 の係数 B は、全部の根の「n − 1 個ずつの積」の和だから(そして 0 を含む積は無いのと同じだから)、
  B = 1⋅2⋅3···(n − 1) = (n − 1)!
である。従って、
  [n S n − 1] = (n − 1)n/2  サ
は簡単に求まり(いわゆる三角数)、
  [n S 1] = (n − 1)!  シ
も、明快な値を持つ。一つだけ注意しなければならないのは、上記の議論では n を 1 以上の整数としている。 n = 0 の場合には
  [0 S 0] = 1
と約束する(ケよりコが優先される)。 n = 0 の場合、シと無関係に [0 S 1] = 0、一般に 0 ≤ n < k なら [n S k] = 0。サは n = 0 に対しても真。

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§24 p を奇素数とする。 [2p S 0] = 0, [2p S 2p] = 1 は自明(前節ケ・コ)。 1 ≤ k ≤ 2p − 1 の場合に話を限る。

【1】 偶数 k = 2 と k = p + 1 の場合を除くと[2p S k] は p の倍数(§14)。

【2】 特に k が奇数なら、 k = 1 と k = 2p − 1 の場合を除き、 [2p S k] は p2 の倍数。中でも k = p の場合には [2p S p] ≡ −2p2 (mod p3) が成り立つ(§16)。

【1.1】 例外ケース k = 2 と k = p + 1 では、 [2p S k] は、それぞれ ≡ 1, −2 (mod p) となる(§14)。

【2.1】 例外ケース k = 1 と k = 2p − 1 では、 [2p S k] が p の倍数であることに変わりないが、 p2 の倍数ではなく、それぞれ ≡ p, −p (mod p2) となる。

証明 【2.1】以外は証明済み。【2.1】について。 k = 1 の場合、前節シから:
  [2p S 1] = (2p − 1)! = {(p + 1)(p + 2)···(p + (p − 1))} × p × (p − 1)!
この整数を m とすると:
  m/p = {(p + 1)(p + 2)···(p + (p − 1))} × (p − 1)!
右辺 { } 内は法 p の下で ≡ 1⋅2···(p − 1) ≡ (p − 1)! なので、 Wilson の定理から:
  m/p ≡ (p − 1)! × (p − 1)! ≡ (−1) × (−1) ≡ 1 (mod p)
つまり m/p は p の倍数より 1 大きい。ゆえに、その p 倍である m は、 p2 の倍数より p 大きい。

次。 k = 2p − 1 の場合、前節サにより、次の三角数が生じる:
  [2p S 2p − 1] = (2p − 1)2p/2 = (2p − 1)p = 2p2 − p
この右辺は p2 の倍数より p 小さい。∎

〔注〕 最後の三角数は p3 より小だから [2p S 2p − 1] ≡ 2p2 − p (mod p3) が成り立つ。同じ結論は §16 のメで t = 0 と置くことによっても得られる。

数値例 p = 5, n = 2p = 10 のケースが分かりやすい(5 の倍数や 25 の倍数は一目瞭然なので)。 X 欄は [10 S k]、 Y 欄は X を 5 で割った余り、 Z 欄は X を 52 で割った余り。

【表1】 n = 10 のときの(符号なし)第一種スターリング数(1 ≤ k ≤ 9)
k12345 6789
X 36288010265761172700723680269325 63273945087045
Y 01000 3000
Z 51050 2302020

【1】の予言通り、この範囲内では k = 2 と k = p + 1 の場合を除くと X は全部 p で割り切れ(Y 欄参照。 k = 10 のときの X = 1 は考察範囲外)、【1.1】の予言通り k = 2 なら Y は p の倍数より 1 大きく、 k = p + 1 なら p の倍数より 2 小さい。【2】の予言通り、 k が奇数なら、 k = 1 と k = 2p − 1 の場合を除くと X は全部 p2 で割り切れ(Z 欄)、【2.1】の予言通り k = 1 なら Z は p2 の倍数より p 大きく、 k = 2p − 1 なら p2 の倍数より p 小さい。

【2】には、 k = p のときの X = 269325 は p3 の倍数より 2p2 小さい、という主張も含まれている。現に
  269325 = 2154 × 53 + 75
で、 75 は 53 = 125 より 2⋅52 = 50 だけ小さい!

〔コメント〕 k が偶数の場合の Z 欄にも何らかのパターン性が潜んでいそうだが、今は深入りしない。上側インデックスが 3p, 4p などの場合も気になるところだが。

これらの性質は p = 5 に限らず、任意の奇素数 p について成り立つ。 p = 3, n = 6 の例。 X, Y, Z の意味は上と同様(X を 3 で割った余りが Y、 32 で割った余りが Z)。

【表2】 n = 6 の場合(1 ≤ k ≤ 5)
k12345
X 1202742258515
Y 01010
Z 34046

【1】の予言通り k = 2 と k = p + 1 の場合を除くと X は全部 p で割り切れ(Y 欄)、【1.1】の予言通り k = 2 なら Y は p の倍数より 1 大きく、 k = p + 1 なら p の倍数より 2 小さい(p = 3 の場合、その二つは同じ意味)。【2】の予言通り、 k が奇数なら、 k = 1 と k = 2p − 1 の場合を除くと X は全部 p2 で割り切れ(Z 欄: p = 3 の場合、該当するのは k = 3 のみ)、【2.1】の予言通り k = 1 なら Z は p2 の倍数より p 大きく、 k = 2p − 1 なら p2 の倍数より p 小さい。

【2】には、 k = p のときの X = 225 は p3 の倍数より 2p2 小さい、という主張も含まれている。現に
  225 = 8 × 33 + 9
で、 9 は 33 = 27 より 2⋅32 = 18 だけ小さい!

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§25 k を奇数とする。定理5
  [2h S k] ≡ kh [2h S k + 1] (mod h3)  タ
は、 Glaisher 自身の表記法では W2h−k(2h) ≡ khW2h−(k+1)(2h) に当たり(§18参照)、 k = 2h − 2t − 1 と置くと:
  W2t+1(2h) ≡ (2h − 2t − 1)⋅h⋅W2t(2h) つまり
  (2h − 2t − 1)⋅h⋅W2t(2h) − W2t+1(2h) ≡ 0  チ

σr = σr(h − 1; 2h) に関連して、公式 (iii) から:
  W2r(2h) ≡ σr (mod h2)
§16参照)。ゆえに、もし W2(t−1)(2h) が h の倍数なら、 σt−1 もそう。公式 (iii) の (μ − ½)L 倍から公式 (iv) を引くことで、
  (μ − 1/2)⋅2h⋅W2t(2h) − W2t+1(2h) ≡ (1/2)(4μ2 − 1)⋅(μ/3!)⋅(2h)3⋅σt−1 (mod h5)  ツ
得ることができる。 μ = h − t は便宜上の変数で、ツは次と同じ意味:
  (h − t − 1/2)⋅2h⋅W2t(2h) − W2t+1(2h) ≡ (1/2)[4(h − t)2 − 1]⋅[(h − t)/3!]⋅(2h)3⋅σt−1 (mod h5)  テ

従って、もし σt−1 が h の倍数なら、ツ(ないしテ)の右辺は h4 の倍数であり、そのときチは(従ってタは)法 h4 の下で成り立つ。

要するに h が W2(t−1)(2h) を割れば、タは法 h3 のみならず法 h4 で有効。ところが h = p が奇素数の場合、 Wy(2p) = [2p S 2p − y] は、少数の例外を除き p で割り切れるのだから(ここでは y = 2t − 2)、この「4乗数を法とする合同式」は(p が奇素数で k が奇数なら)原則として常に成り立つ。前節【1】を参照すると、例外の一つの可能性は、下側インデックス 2 の場合。すなわち 2p − y = 2p − 2t + 2 = 2 つまり t = p の場合。これは k = −1 を含意する(仮定により k = 2p − 2t − 1 だから)。タの下側インデックスが負になってしまい、題意に適さない。

あえて数値を言うと、 k = −1 ならタの両辺とも整数 0。命題は自明で、興味に乏しい。

問題はもう一つの例外、すなわち 2p − y = 2p − 2t + 2 = p + 1 の場合。これは 2t = p + 1 を含意する。この場合、確かに σt−1 は p で割り切れず、ツないしテの右辺において、素因子 h = p の供給源が一つなくなる。ところが、このケースでは μ = h − t = p − t = p − (p + 1)/2 = (p − 1)/2 であり、ツないしテには、
  4μ2 − 1 = (2μ + 1)(2μ − 1)  ト
という因子もあるため、結局(この別の場所から)追加の素因子 p が供給され(μ = (p − 1)/2 なら 2μ + 1 = p である)、結果的には(通常のケースと同様に)法 p4 の下での合同が維持される。 k = 2p − 2t − 1 なので、 k = p − 2 の場合に当たる(具体例)。

最後に(これは例外というより自明だが)、 y = 0 の場合、 Wy(2p) = [2p S 2p − y] = 1 は p で割り切れない。 k = 2p − 3 のケースに当たる。この場合、追加の素因子 p は供給されず、合同式の法は p4 ではなくデフォルトの p3 にとどまる。

結論として、タが法 h4 の下で成り立つための十分条件は、 h = p が 5 以上の素数で、奇数 k が 1 ≤ k ≤ 2p − 5 の範囲にあること。タの [2p S k] を Glaisher 風に Wr(2p) ないし Sr(2p − 1) と書くなら(r = 2p − k)、奇数 r が 5 ≤ r ≤ 2p − 1 の範囲にあること。 σt−1 が p で割り切れないケース k = p − 2 は、 Glaisher の記法では r = p + 2 に当たる。

〔注〕 h = p = 3, k = 1 のケースは特殊であり、除外される。その場合 k = 1 は上記不等式の範囲内にあり、実際ツないしテにおいて素因子 3 が四つ生じるものの、分母に 3 があるため素因子の一つは約されてしまい、法は p3 にとどまる。任意の奇素数 p ≥ 3 に対して k = 2p − 1 の場合、タの両辺は整数として等しく(§18)、従って法 p4 は自明に有効だが、ここでは自明なケースを無視する。

トからの素因子 p の供給は、 μ = (p − 1)/2 つまり t = (p + 1)/2 の場合だけでなく、 μ = (p + 1)/2 つまり t = (p − 1)/2 の場合にも起きる。後者の場合、 σt−1 からも素因子 p が供給されるため、法 p5 の下で合同式が成り立つ。タで k = p の場合に当たる。変則的な事例として、 p = 3, k = 3 の場合、分母の 3! との約分によって素因子 3 が一つ失われるものの、トからも素因子 3 が供給されるので、デフォルトの法 p3 が維持される。

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現代では、第一種スターリング数に、組み合わせ論的な再解釈も与えられている。 n 個の物を並び替える n! 種類の方法のうち、 k 個の「サイクル」で表現されるものはいくつあるか―― [n S k] は、そのカウントでもある。

Glaisher [7] は59節から成り、多くの命題を含むが、この mod p4 の合同式(特に上側インデックスが偶数のケース)が一つのヤマ場だろう。(続く)

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2026-07-14 博士の愛した公式(その5) mod p5

kp [2p S k + 1] − [2p S k] を p5 で割った余り(k: 奇数)。特に、割り切れるケースについて。

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§26 p ≥ 5 を素数とする。自明なケースも含めると、法 p4 の下での合同式
  kp [2p S k + 1] ≡ [2p S k] (mod p4)  ナ
は、 k = 2p − 3 の場合を唯一の例外として、任意の奇数 k に対して成り立つ(§25)。ナは、
  (1/2)[4(p − t)2 − 1]⋅[(p − t)/3!]⋅(2p)3⋅σt−1  ニ
が p4 で割り切れることと同値(§18§25・テ参照)。ここで:
  k = 2p − 2t − 1 つまり t = p − (k + 1)/2
σj は σj(p − 1; 2p) を表す(定義)。もし、より強く、ニが p5 で割り切れるなら、ナは法 p5 の下で成り立つ。

ナの左辺と右辺の差は、法 p5 の下でニと合同。もしニが p5 で割り切れず p4 で割り切れるなら、ナの両辺の差は αp5 + βp4 の形だから、法 p4 の下でナは成り立つ。もしニが p4 で割り切れず p3 で割り切れるなら、ナの両辺の差を αp5 + βp4 + γp3 と書けるから、法 p3 の下でナは成り立つ。

非自明なケース k = 1, 3, ···, 2p − 3 に話を限るなら(1 ≤ t ≤ p − 1)、 p4 がニを割るためには、《ア》 p が 4(p − t)2 − 1 を割るか、または《イ》 p が σt−1 を割ることが必要十分。《ア》は t = (p ± 1)/2 つまり k = p − 2, p と同値、《イ》は t ≠ 1, (p + 1)/2 つまり k ≠ 2p − 3, p − 2 と同値。

《イ》について、 t = 1 なら σt−1 = 1 は p の倍数でない。 t = (p + 1)/2 の場合も、 σt−1 = σ(p−1)/2 ≡ Wp−1(2p) ≡ −2 (mod p) は p の倍数でない(定理3)。しかし t = (p + 1)/2 の場合、《ア》が満たされるので、ナは成り立つ。 t = 1 の場合に限って(k = 2p − 3)、《ア》も《イ》も満たされず、ナは必ず不成立(法 p3 の下でなら、同じ合同式が成立)。 t = (p − 1)/2 の場合、《ア》と《イ》の両方が満たされ、ニは p5 の倍数(結果的に、法 p5 の下で合同式ナが成立)。

Glaisher の表記法では、ナは:
  (2p − r)pSr−1(2p − 1) ≡ Sr(2p − 1) (mod p4)
ここで:
  k = 2p − r 従って k + 1 = 2p − (r − 1)
  [2p S 2p − y] = Sy(2p − 1) = Wy(2p), r = 2t + 1

変則的な k = p − 2 つまり t = (p + 1)/2 のケース(r = p + 2 に当たる)に関して、便宜上の変数 μ = p − t を使うと
  μ = (p − 1)/2 そして 4μ2 − 1 = 4[(p − 1)/2]2 − 1 = p2 − 2p
であり、従ってニは
  (p2 − 2p)⋅[(p − 1)/3]⋅p3⋅σ(p−1)/2 = [p4(p − 2)(p − 1)/3]⋅σ(p−1)/2
に等しいから p4 の倍数。ゆえに、このケースでもナが成り立つことが再確認される。のみならず σ(p−1)/2 ≡ −2 (mod p) であるから(§16)、ナの両辺の差は、法 p5 の下で
  p4 × (p − 2)(p − 1)(ℓp − 2)/3 ≡ −4p4/3  ヌ
と合同(ℓ は何らかの整数)。すなわち k = p − 2 の場合:
  3kp [2p S k + 1] − 3 [2p S k] ≡ −4p4 (mod p5) つまり
  3(p − 2)p [2p S p − 1] − 3 [2p S p − 2] ≡ −4p4 (mod p5)  ネ

上記のようにして Glaisher は「第10公式」の証明を完成させ、関連する mod p5 の合同式ネについても付記している([7], §53)。より単純で明白な k = p のケース
  p⋅p [2p S p + 1] − [2p S p] ≡ 0 (mod p5)
が言及されていないのは、奇妙に思われる。

p = 5 の例では、 σ(p−1)/2 = 1773 = 355p − 2 であり(ℓ = 355)、ヌの左辺 p4 × 3⋅4⋅1773/3 = 7092p4 は、 k = p − 2 = 3 のときのナの左辺と右辺の差 15492p4 と、法 p5 の下で(この例では、実際には法 p6 の下で)合同。現に 15492 − 7092 = 8400 は p で(実際には p2 で)割り切れる。ヌの右辺を使って言い換えると:
  15492p4 ≡ −4p4/3 (mod p5)
  ∴ 15492⋅3 ≡ −4 (mod p)
(法 5 の下で、この最後の合同式は確かに成り立つ。)この場合、ナの両辺の差は 54 で割り切れるのだから、その 3 倍であるネの左辺ももちろん 54 で割り切れるが、 55 では割り切れない。 55 で割ったときの余りは (5 − 4)⋅54 = 54 = 625 に等しい。

p = 7 なら σ(p−1)/2 = 712185 = 101741p − 2。ヌの左辺 p4 × 5⋅6⋅712185/3 = 7121850p4 は、 k = p − 2 = 5 のときのナの両辺の差 44484154p4 と、法 p5 の下で(この例では、実際には法 p7 の下で)合同。現に 44484154 − 7121850 = 37362304 は p で(実際には p3 で)割り切れる。ヌの右辺を使って言い換えると:
  44484154p4 ≡ −4p4/3 (mod p5)
  ∴ 44484154⋅3 ≡ −4 (mod p)
この場合、ネの左辺を 75 で割ったときの余りは (7 − 4)⋅74 = 3⋅74 = 7203 に等しい。

同様に p = 11 の場合、ネの左辺を 115 で割ったときの余りは 7⋅114 に等しく、 p = 13 の場合、ネの左辺を 135 で割ったときの余りは 9⋅134 に等しい。

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§27 ナの両辺の差は、法 p5 の下でニと合同:
  kp [2p S k + 1] − [2p S k] ≡ (2/3)[4(p − t)2 − 1]⋅(p − t)⋅p3⋅σt−1  ハ
ただし t = p − (k + 1)/2, k = 2p − 2t − 1。

前節後半ではハの関係を利用して、 k = p − 2 のケースを mod p5 で観察した。同じ関係ハを利用して、 k = 2p − 3 のケース(法 p4 の下でナが成り立たないような、唯一の奇数 k)について、次の簡潔な命題を導くことができる。
  (2p − 3)p [2p S 2p − 2] − [2p S 2p − 3] ≡ −2p3 (mod p4)  ヒ

実際 k = p − 2 なら t = 1 なので:
  [4(p − t)2 − 1]⋅(p − t) = [4(p2 − 2p + 1) − 1]⋅(p − 1) ≡ −3 (mod p)  フ
これを (2/3)⋅p3 倍し、 σ1−1 = 1 に留意すると、ハから直ちにヒを得る。

例えば p = 5 としよう。 k = 7 のとき、ハの左辺
  7⋅5⋅[10 S 8] − [10 S 7] = 7⋅5⋅870 − 9450 = 21000 = 53 × 168
は、他の奇数 k の場合と違い 54 で割り切れない。 54 で割った余り 375 は、ヒから (5 − 2)⋅53 = 3⋅125 に等しい。同様に p = 7, k = 11 のとき、
  11⋅7⋅[14 S 12] − [14 S 11] = 11⋅7⋅3731 − 91091 = 196196 = 73 × 572
は 74 で割り切れないが、 74 で割った余り 1715 は (7 − 2)⋅73 = 5⋅73 に等しい。

以上のような特殊なケース以外では、 σt−1 は素因子 p を一つ持ち、ハの右辺は素因子 p を四つ持つ。このような一般のケースにおいても、原理的には上記と同様の方法で、法 p5 の下でのハの値を決定することができる。すなわち、
  C ≡ σt−1 ≡ W2t−2(2p) (mod p2)
  D ≡ (2/3)[4(p − t)2 − 1]⋅(p − t) (mod p)
と置くと、積 CDp3 は法 p5 の下でハと合同。

この問題は、 p 進法における「二つの数の積」の「0 でない最下位桁」を求めることに、似ている。 C と D は、それぞれ「ある数の 0 ではない最下位桁」に当たる。ハは一般には p4 の倍数だが p5 の倍数でないので、「一般には 0 ではない最下位桁」は p5 の位に属する。

例えば t = 2 の場合(k = 2p − 5)、
  D ≡ (2/3)[4(p − 2)2 − 1]⋅(p − 2) ≡ (2/3)⋅15⋅(−2) ≡ −20 (mod p)
であり、一方、
  W2(n) = n(n − 1)(n − 2)(3n − 1)/24
であるから(問題4参照):
  C ≡ 2p(2p − 1)(2p − 2)(6p − 1)/24 ≡ −p/6 (mod p2)
  ∴ CDp3 ≡ 10p4/3 (mod p5)

従って、この場合、ハの左辺の 3 倍について、次の関係が成り立つ。
  3(2p − 5)p [2p S 2p − 4] − 3 [2p S 2p − 5] ≡ 10p4 (mod p5)

〔例〕 p = 7 の場合(t = 2, k = 7)。 Δ = 9⋅7⋅[14 S 10] − [14 S 9] = 76222146 = 74 × 31746 が 74 で割り切れることは既知。 Δ は 75 では割り切れず、 3Δ を 75 で割った余りは、法 75 の下で 10⋅74 と合同。すなわち 3 倍して 75 で割ると 3⋅74 余る。要するに(3 倍しないで)単に 75 で割ると 74 余る。 31746 = 7q + 1 と書くなら(q = 4535):
  Δ = 74 × (7q + 1) = 75q + 74

実際には、一般の t に対して剰余類 C を決定することは簡単ではない。

mod p5 においてハは、 t = 1 なら 22p4/3 − 2p3 に合同(これは特殊なケース。フを mod p2 で考えればいい)。 t = 2 なら 10p4/3 に合同(上述)。 t = 3 なら −7p4/6 に合同。 t = 4 なら 4p4/3 に合同。

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§28 合同式 kp [2p S k + 1] ≡ [2p S k] は、法 p4 の下で成り立つ(p ≥ 5 は素数)。ただし k = 2p − 3 のとき(t = 1, μ = p − 1)は唯一の例外で、成り立たない(法 p3 の下でなら成り立つ)。ここで:
  μ = (k + 1)/2, t = p − μ

同じ合同式が、法 p5 の下で成り立つことがある。 k = p つまり t = (p − 1)/2, μ = (p + 1)/2 はその十分条件だが、必要条件ではない。 k ≠ p の場合でも、法 p5 が有効なケースが散在する。

最小の例は、 p = 37, k = 39 のとき。73桁の
  [2⋅37 S 40] = 773 00940 94817 78300 70518 43372 81182 84853 47594 17819 77032 21890 81338 77488 43478
と、75桁の
  [2⋅37 S 39] = 26053 66087 01790 16184 23879 22430 39981 03842 10289 64253 27305 55853 76445 12104 76378
は、次の関係を満たす(t = 17, μ = 20):
  37⋅39 [2⋅37 S 40] ≡ [2⋅37 S 39] (mod 375)

同時に、次の関係も成り立つ(k = 3, t = 18, μ = 19):
  3⋅39 [2⋅37 S 4] ≡ [2⋅37 S 3] (mod 375)

分析。 Δ = kp [2p S k + 1] − [2p S k] は、次の和に等しい
  (1/2)(4μ2 − 1){[μ/3!]⋅(2p)3⋅σt−1 + [2μ(μ2 − 1)/5!]⋅(2p)5⋅σt−2 + [3μ(μ2 − 1)(μ2 − 22)/7!]⋅(2p)7⋅σt−3 + ···}
この { } 内の第2項以降は p5 の倍数だか mod p5 においては無いのと同じ:
  Δ ≡ (4μ2 − 1)⋅(/3)⋅p3⋅σt−1 (mod p5)  マ
同様に mod p6 ないし mod p7 の議論では、一般には { } 内の第2項を考慮する必要があるが、第3項以降は無いのと同じ:
  Δ ≡ (4μ2 − 1)[(/3)⋅p3⋅σt−1 + (4μ(μ2 − 1)/15)⋅p5⋅σt−2] (mod p7)  ミ

† 第2項の分母の素因子 5 は約される。 μ ≡ 0, ±1 (mod 5) なら分子によって、 μ ≡ ±2 なら 4μ2 − 1 によって。

t = 1 と t = (p + 1)/2 の場合を除き σt−1 は p の倍数なので、マの Δ は p4 の倍数。 k = p つまり μ = (p + 1)/2 なら 4μ2 − 1 = (2μ + 1)(2μ − 1) も p の倍数なので、 Δ は p5 の倍数。 k = p − 2 つまり μ = (p − 1)/2, t = (p + 1)/2 のときも 4μ2 − 1 は p の倍数だが、この場合、
  σt−1 = σ(p−1)/2 ≡ Wp−1(2p) ≡ −2 (mod p)
が p の倍数でないため(§16)、 Δ は p4 の倍数にとどまる。以上二つのケース(k = p, k = p − 2)以外では 4μ2 − 1 は p の倍数ではない。一方、 k = 2p − 3 つまり t = 1 の場合、 σt−1 = 1 は p の倍数でないので、 Δ は p4 の倍数ではない(p3 の倍数ではある)。

ゆえに k = p なら Δ は必ず p5 の倍数だが、 k ≠ p の場合に Δ が p5 の倍数になるためには、
  σt−1 ≡ W2t−2(2p) (mod p2)
が p2 の倍数であることが必要かつ十分。例えば、最初に挙げた p = 37, k = 39, t = 17 の場合、
  W2⋅17−2(2⋅37) = [74 S 42]
が素因子 p = 37 を二つ含む。 p = 37, k = 3, t = 35 の場合、
  W2⋅35−2(2⋅37) = [74 S 6]
が素因子 p = 37 を二つ含む。一般には y が偶数のとき [2p S y] は素因子 p を一つしか持たないのだから、その点において、これらの例は特異的。逆に言うと、
  [2p S 2p − 2t + 2] ≡ 0 (mod p2)  ム
を満たす素数 p ≥ 7 と非自明な偶数 2t があれば(4 ≤ 2t < 2p。 2t = 2 のときにはムは成り立たない)、そのとき W2t−2(2p) ≡ σt−1 ≡ 0 (mod p2) が成り立ち、 Δ は p5 の倍数となる(k = 2p − 2t − 1)。 2t = p − 1 の場合には自動的に Δ は p5 の倍数となり、条件ムは必要ない。それ以外の場合、 Δ = 0 となる自明なケースを除外するなら、 p5 が Δ を割るためには、条件ムが必要かつ十分。

上記の主張は p = 5 に対しても正しい。 p = 5 の場合、ムを満たすような非自明な 2t は存在しない。 2t = p − 1 = 4 つまり t = 2 のとき Δ は p6 の倍数になるが、これは mod p6 での議論であり、別のメカニズム(合同式ミ)に基づく。

とはいうものの、合同式マは、しばしば法 p6 の下においても成り立つ。というのも、明らかな例外を除くと、任意の r に対して σr−1 は p の倍数。従って、マにはなくミで追加されている項は、多くの場合 p6 の倍数であり(σt−2 が p の倍数ならそうなる)、その場合 mod p6 において、無いのと同じ。言い換えると W2r(2p) と σr(p − 1; 2p) の合同関係は、一般には p2 を法とするものだが、実際には多くの場合、法 p3 の下でも成り立つ。その場合、もし W2t−2(2p) が p3 の倍数なら σt−1 もそうなる。

この理由から、もし仮にムが成り立つだけでなく、
  [2p S 2p − 2t + 2] ≡ 0 (mod p3)  メ
が成り立つなら、 Δ は p6 の倍数になり得る。現に p = 59, k = 71, t = 23 に対してメが成り立ち、 Δ が p6 の倍数となる。

p = 5, k = 5, t = 2 の場合にも p6 は Δ を割るが、それはマが法 p6 の下においては成り立たないケースに当たり、合同式ミに基づく。全数検索によると、 p < 500 の範囲には、以上二つの他に p6 が Δ を割る非自明な例は存在しない(つまりメが成り立つ例は、この範囲に一つしかない)。合同式メは、極めて成り立ちにくいようだ。

一方、合同式ムが成り立つこと(その結果 k = p かどうかと無関係に、 p5 が Δ を割ること)は、さほど珍しくない。分布はまばらだが、かなり多くの事例が見つかる。 p < 200 の範囲では次の通り。ここで m は μ と同じ。右端の数は、 Δ が含む素因子 p の個数(p = 59 のとき、特別なケースがある)。

p=37 : [k,t,m]=[39, 17, 20] : 5
p=37 : [k,t,m]=[3, 35, 2] : 5
p=59 : [k,t,m]=[71, 23, 36] : 6
p=59 : [k,t,m]=[13, 52, 7] : 5
p=67 : [k,t,m]=[73, 30, 37] : 5
p=67 : [k,t,m]=[7, 63, 4] : 5
p=101 : [k,t,m]=[131, 35, 66] : 5
p=101 : [k,t,m]=[31, 85, 16] : 5
p=103 : [k,t,m]=[179, 13, 90] : 5
p=103 : [k,t,m]=[77, 64, 39] : 5
p=131 : [k,t,m]=[237, 12, 119] : 5
p=131 : [k,t,m]=[107, 77, 54] : 5
p=149 : [k,t,m]=[165, 66, 83] : 5
p=149 : [k,t,m]=[17, 140, 9] : 5
p=157 : [k,t,m]=[249, 32, 125] : 5
p=157 : [k,t,m]=[201, 56, 101] : 5
p=157 : [k,t,m]=[93, 110, 47] : 5
p=157 : [k,t,m]=[45, 134, 23] : 5

必ずペアで存在することが見て取れる。特定の p に対して、正の奇数 k = k1 ≤ p が条件を満たすとき k = k1 + p − 1 も条件を満たす。言い換えると、正の整数 t = t1 ≤ (p − 1)/2 が条件を満たすとき t = t1 + (p − 1)/2 も条件を満たす。

〔追記〕 p = 37, 59, 67, 101, ··· は、非正則素数(irregular primes)のリストと一致する。図らずも、スターリング数とベルヌーイ数の密接な関係を垣間見ることができる。
https://oeis.org/A000928
(Irregular primes: primes p such that at least one of the numerators of the Bernoulli numbers B_2, B_4, ..., B_{p-3} (A000367) is divisible by p.)
素数 p が B2j の分子を割るとき、 j + 1 が上記の t に当たる。言い換えると、 p が B の分子を割るとき、 p2[2p S 2p − ℓ] を割る(ℓ = 2j は 0 以上 p − 3 以下の偶数)。例えば B12 = −691/2730 だから(2j = 12)、 p = 691, t = 7 は条件を満たす。 t = 1, 2, ···, 6 と t = 8 は決して条件を満たさない(B0, B2, ···, B10 と B14 の分子が十分大きな素因子を持たないから)。 t = 7 のケースは p = 691 のみ。 t = 9 のケースは p = 3617 のみ。 t = 10 のケースは p = 43867 のみ。 t = 11 のケースは p = 283, 617 のみ。 t = 12 のケースは p = 131, 593 のみ。等々。(2026年7月16日)

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2026-07-20 法 p で見たスターリング数

n = 4 のときのスターリング数 6, 11, 6, 1 をそれぞれ 5 で割ると、余りは 1, 1, 1, 1(【表3】参照)。 n = 5 のときのスターリング数を 5 で割ると、余りは 4, 0, 0, 0, 1。同様に n = 6 のとき 0, 4, 0, 0, 0, 1。 n = 7 のとき 0, 4, 4, 0, 0, 1, 1。

【表3】 スターリング数 [n S k] の例
k = 1234567
n = 4 61161 
n = 5 245035101 
n = 6 12027422585151 
n = 7 72017641624735175211

一般に、スターリング数 [n S k] を奇素数 p で割った余りは、一定の(しばしば単純で特徴的な)パターンを持つ。

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§29 基本の再帰的関係
  [n + 1 S k] = n [n S k] + [n S k − 1]  (✽)
は、以下で重要なツールとなる。つまり n = ℓ の段の、隣り合う(k − 1 番と k 番の)二つのスターリング数 a, b が分かっているとき、 b の真下の(n = ℓ + 1 の段の k 番の)スターリング数 c を、
  c = ℓb + a
によって求めることができる。例えば【表3】で 85 = 5⋅10 + 35。逆に c とその真上の数 b が分かっているとき、同じ関係から a を求めることも易しい。仮に n = 5 の段の k = 4 のときの値 a が未知で、その右の b = 1 と b の真下の c = 15 が分かっているとすると、 15 = 5⋅1 + a だから a = 10。

ある数 c とその左上の数 a が既知の場合も、同様に a の右隣の数 b を決定できる。こうした計算は、整数演算として有効なだけでなく、任意の法の下でも実行可能。

a, b から c を求める順方向の計算の場合、法演算は実質的に整数演算と変わらない。 c から a ないし b を逆算する場合、 ℓ による割り算が絡むため、法演算では特有の問題が生じることがある。

この再帰的関係について(パスカルの三角形の同様の計算についてもそうだが)、これまで「表の空欄(三角形の外側)の数を参照する必要がある場合、その数を 0 と見なす」という素朴な規約を、当然のことのように受け入れてきた。その規約に関して、ここである程度、明確化しておきたい。

n を 0 以上の整数とする。われわれは n 次の多項式 ƒn(x) = x(x + 1)(x + 2)···(x + n − 1) の n − r 次の項の係数(整数である)を Wr(n) と定義する。この多項式に n + 1 次の項は無く、強いて言えば n + 1 次の項の係数 W−1(n) は 0。より一般的に、負の整数 r に対して Wr(n) = 0 と考えるのは、合理的だろう。さて、スターリング数(符号なし第一種。以下同じ)の記号
  [n S n − r]
は、 Wr(n) と同じ意味の別表記に過ぎない。よって、上記のことから W−1(n) = [n S n + 1] = 0 となり、より一般的に、 k > n ならば、
  [n S k] = Wn−k(n) = 0
となる(n − k < 0)。下側インデックス n + 1 のスターリング数が定義されていることは、(✽)を k = n + 1 のケースに適用するために必要。同様に(✽)を k = 0 のケースに適用するためには、
  [n S −1] = Wn+1(n) = 0
であることが要請される。一般に、少なくとも n が正の場合において、 k ≤ 0 または k > n ならば [n S k] = 0 と定義する。

〔注〕 ただし [n S 0] = 0 は一般的に成り立つことではなく、現に n = 0 なら [n S 0] = 1 とされる(そう約束するべきことは、同じ(✽)からも示唆される)。ここでは n が負の場合については扱わない。これらは一見ペダンチックな技術論のようだが、実は第一種と第二種スターリング数を統一的に眺めるための素晴らしい観点を秘めている。

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§30 p を素数とする。 r = p − 1 なら Wr(p) ≡ −1 であり(Wilson の定理)、 r = 0 なら Wr(p) ≡ 1 (mod p) だ。番号 r がそのどちらとも異なるなら、 Wr(p) ≡ 0 である(Legendre の定理)。換言すると、 [p S 1] = (p − 1)! ≡ −1 と [p S p] = 1 ≡ 1 を除けば [p S k] ≡ 0。

【表4】 法 5 の下でのスターリング数
k = 0123456
n = 4 0111100
n = 5 0−100010

このことから、一つ上の段の各スターリング数 [p − 1 S k] について、次が成り立つ。

定理6.1 p ≥ 2 が素数のとき、任意のスターリング数 [p − 1 S k] は、もし値が 0 でなければ、 p を法として 1 と合同(つまり p の倍数より 1 大きい)。

〔例1〕 n = 4 のときの非ゼロのスターリング数 6, 11, 6, 1 は、どれも p = 5 の倍数より 1 大きい。

証明 p = 2 に対応する唯一の非ゼロのスターリング数 [1 S 1] = 1 は、確かに命題に従う。 p ≥ 3 と仮定する。 k = p − 1 ならもとより [p − 1 S p − 1] = 1 ≡ 1 であり、そのことと [p S p − 1] ≡ 0 から、(✽)は(n = p − 1, k = p − 1 と置くと)、
  [(p − 1) + 1 S p − 1] ≡ (p − 1) [p − 1 S p − 1] + [p − 1 S (p − 1) − 1]
  ∴ 0 ≡ (p − 1)⋅1 + [p − 1 S p − 2] つまり 0 ≡ (−1) + [p − 1 S p − 2]
を含意する。従って [p − 1 S p − 2] ≡ 1。 p = 3 なら、ひとまずこれでいい。 p ≥ 5 なら、この結果と [p S p − 2] ≡ 0 から、(✽)は(n = p − 1, k = p − 2 と置くと)、
  [(p − 1) + 1 S p − 2] ≡ (p − 1) [p − 1 S p − 2] + [p − 1 S (p − 2) − 1]
  ∴ 0 ≡ (p − 1)⋅1 + [p − 1 S p − 3] つまり 0 ≡ (−1) + [p − 1 S p − 3]
を含意する。従って [p − 1 S p − 3] ≡ 1。同様に進めて k = 2, 3, ···, p − 1 に対して [p − 1 S k] ≡ 1。最後に、 p = 3 でも p ≥ 5 でもこの合同式が k = 1 に対しても有効なことが、(✽)に基づく同様の計算によって示される――自明なる [p − 1 S 0] ≡ 0 と既知の関係 [p S 1] ≡ −1 を利用して。∎

〔例2〕 n = 6 のときの 120, 274, 225, 85, 15, 1 は、どれも p = 7 の倍数より 1 大きい。

〔例3〕 n = 10 のときの 362880, 1026576, 1172700, 723680, 269325, 63273, 9450, 870, 45, 1 は、どれも 11 の倍数より 1 大きい。この最後の主張を確かめる一つの方法は、「正の整数 a の奇数桁目の和から、偶数桁目の和を引いたもの」を考えること。この差が 11 の倍数なら a が 11 で割り切れることは、よく知られている。この差が 11 の倍数より 1 大きいなら、 a も 11 の倍数より 1 大きい。例えば 63273 の場合、奇数桁目の和 3 + 2 + 6 = 11 から偶数桁目の和 7 + 3 = 10 を引いたものは、 11 の倍数 0 より 1 大きい。また例えば 9450 の場合、奇数桁目の和 0 + 4 = 4 から偶数桁目の和 5 + 9 = 14 を引いたものは、 11 の倍数 −11 より 1 大きい。

 p ≥ 2 が素数のとき、法 p の下で:
〘ⅰ〙 [p − 1 S 1] = (p − 2)! ≡ 1
〘ⅱ〙 p ≥ 3 ならば [p − 1 S p − 2] = Tp−2 = (p − 2)(p − 1)/2 ≡ 1
ここで Tm は m 番目の三角数 m(m + 1)/2 を表す。

これらの命題は定理6.1(証明済み)の一部だが、次のように、直接証明することも易しい。

証明 〘ⅰ〙 Wilson の定理 (p − 1)! ≡ −1 の両辺を p − 1 ≡ −1 (≢ 0) で割る。〘ⅱ〙 (p − 2)(p − 1)/2 − 1 = (p2 − 3p)/2 = p × (p − 3)/2 は p の倍数(仮定により p は奇素数で (p − 3)/2 は整数)。従って (p − 2)(p − 1)/2 − 1 ≡ 0。

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§31 p ≥ 3 を任意の素数とする。上側インデックス n = p, p + 1, ···, 2p − 2 の p − 1 行と、下側インデックス k = 1, 2, ···, p − 1 の p − 1 段について、 [n S k] の値を正方形状に並べたもの(正方行列)を A とする。同様に、 A の左に隣接する p − 1 行 p − 1 列の領域(下側インデックス k = p, p + 1, ···, 2p − 2)を B とする。

【表5】 法 5 の下でのスターリング数(A 領域と B 領域)
k = 12345678
n = 5 −1000+1000
n = 6 0−1000+100
n = 7 0−1−100+1+10
n = 8 0−2−3−10+2+3+1

このとき:

定理6.2 p ≥ 3 が素数のとき、 A 領域と B 領域(n = p の段を第1行、 k = 1, p の列をそれぞれ第1列とする p − 1 行の正方行列)の対応する成分(スターリング数)は、法 p の下で、互いに −1 倍の関係にある。 A の左上から右下への「対角線」上にある成分は、いずれも −1 に合同。各領域の「対角線」より上の成分は、いずれも 0 に合同。さらに:
〘ⅰ〙 各領域の第1行と第1列は、対角成分(左上隅の ∓1)を除くと、どの成分も ≡ 0。
〘ⅱ〙 各領域の第2行は、対角成分を除くと、どの成分も ≡ 0。
〘ⅲ〙 各領域の第3行は、第2列の ∓1 と対角成分の ∓1 を除くと、どの成分も ≡ 0。
〘ⅳ〙 p ≥ 5 の場合、各領域の第4行は、第2列・第3列の ∓2, ∓3 と対角成分の ∓1 を除くと、どの成分も ≡ 0。

証明 法 p において、領域の第1行は Wilson–Lagrange の定理によって確定していて、左上隅の ∓1 を除けばどの成分も ≡ 0。第2行以降の各成分は再帰的関係(✽)によって定まる。その際、領域内の値が領域外からの影響を受けるのは、領域の第1列の手前の列(最下段を除く)が 0 以外の成分を含む場合だけ。このケースでは、そのような成分は存在しない。実際、領域 A の手前(k = 0 の列)には明らかに 0 しかない。領域 B の手前(k = p − 1 の列)には、最下段を除けば p の倍数(法 p の下で 0)しかない――それらの数は、逆三角形状の「p の倍数領域」に属するから。

A の対角成分がいずれも −1 であることは、一般化された Wilson の定理による。 B の対角成分がいずれも 1 であることは自明。 A の第1列が、左上隅の要素を除きどれも ≡ 0 である理由は、任意の n ≥ p + 1 に対して、 [n S 1] = (n − 1)! は p の倍数だから。〘ⅱ〙以降の主張については、第1行の各成分の剰余(既知)を基に、(✽)による直接計算で確かめられる。∎

〔注〕 p ≥ 7 の場合、原理的には第5行以降についても、同様の計算によって、各成分が属する剰余類を決定できる。

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§32 正方形状の上記 A, B 領域では、上部の行から下部の行へと(対角成分より下にある)成分の値(mod p)が徐々に複雑になっていく。しかしこれらの領域の直下、すなわち n = p − 1 の段では、再びシンプルなパターン(非ゼロ成分は ∓1 のみ)が現れる。さらに、 n = p の段を第1行として、再び A, B と似た三つの正方行列(それぞれ p − 1 行 p − 1 列)が現れる。

【表6】 法 5 の下でのスターリング数(続き)
k = 2345678910111213
n = 9 −1−1−1−11111 
n = 10 1000−20001000
n = 11 01000−2000100
n = 12 01100−2−200110
n = 13 02310−4−6−20231

k = 0, 1 に対する値は全て 0 に合同(【表6】では表記省略)。n ≥ 2p + 1 のとき、 k = 2 に対する値も全て ≡ 0。

n = 2p の段のスターリング数(p ≥ 3)では、第一に k = 2p に対する値 W0 が = 1 ≡ 1 (mod p) であることは自明。第二に、 k = p + 1 に対する値 Wp−1 が ≡ −2 で、第三に k = 2 に対する値 W2p−2 が ≡ 1。それら三つ以外の値はどれも ≡ 0 である(補題6)。 A 領域の対角成分 −1 を延長すると、 n = 2p の段で(左上から右下へと斜めに並ぶ負の剰余の)値が −1 から −2 に変わるが(mod p)、この挙動は、拡張された Wilson の定理による。 n = 2p − 1 の段のスターリング数のうち k = p に対するものは ≡ −1 なので、再帰的関係(✽)によって、
  [2p S p] ≡ [2p − 1 S p] + (2p − 1) [2p − 1 S p − 1]
  ∴ 0 ≡ (−1) + (−1) [2p − 1 S p − 1]
  ∴ [2p − 1 S p − 1] ≡ −1
でなければならない。この結果を再利用して同様に進めることにより、 k = 2, 3, ···, p のいずれに対しても [2p − 1 S k] ≡ −1 であることが確立する(k = 2 に関しては、 [2p S 2] ≡ 1 と [2p − 1 S 1] ≡ 0 からも同じ結論に)。同様の「再帰的関係の逆算」により、 k = p + 1, p + 2, ···, 2p − 1 のいずれに対しても [2p − 1 S k] ≡ 1 が成立(k = p + 1 に関しては、 [2p S p + 1] ≡ −2 と [2p − 1 S p] ≡ −1 からも同じ結論に)。

k がそれら以外の値(k ≤ 1 または k ≥ 2p)なら、 [2p − 1 S k] ≡ 0 であることは自明。そのうち k = 1 に対する値が ≡ 0 であることは、再帰的関係からも明らかだが、具体的には「n ≥ p + 1 なら [n S 1] = (p − 1)! は p の倍数」という事実―― n がその範囲なら (n − 1)! は因子 p を含むから、当然そうなる――に基づく。要約すると:

定理6.3 p ≥ 3 が素数のとき、 n = 2p − 1 の段には、 k = 2 から p まで −1 が、 k = p + 1 から 2p − 1 まで 1 が、それぞれ p − 1 個並ぶ(ただし、これらの −1 と 1 は法 p の下での剰余を意味する)。次の n = 2p の段を第1行、 k = 2 の列を第1列として、定理6.2と同様に、三つの(p − 1 行の)正方行列 A′, B′, C′ を(法 p の下で)考えると、 A′C′ ≡ B かつ B′ ≡ −2B。

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p ≥ 3 を奇素数とする。
  [p S 1] = (p − 1)! = ℓp − 1  ㋐
  [p S p] = 1  ㋑
の二つのケースを除くと(ℓ は何らかの整数)、任意の整数 k に対して [p S k] は p の倍数。のみならず、
  [p S p − 1] = p(p − 1)/2  ㋒
を唯一の例外として、 β − 1 が偶数なら Wp−α(p) = [p S β − 1] は p2 の倍数。

従って下側インデックス β が奇数の場合、㋐㋑㋒が関係しないなら(すなわち奇数 β が 1, p 以外なら)、
  [p + 1 S β] = p [p S β] + [p S β − 1] ≡ 0 (mod p2)
が成り立つ(右辺の二つの項は、どちらも p2 の倍数だから)。㋐㋑㋒の一つ以上が関係する場合はそうならず、次の 2 種類の特例が生じる。
  [p + 1 S 1] = p [p S 1] + [p S 0] = p⋅(ℓp − 1) + 0 ≡ −p (mod p2)
  [p + 1 S p] = p [p S p] + [p S p − 1] = p⋅1 + p(p − 1)/2 = p(p + 1)/2 ≡ p(p + 1)/2 (mod p2)

次に、上側インデックス 2p の場合を考える。
  [2p S 2] ≡ 1 (mod p) = ℓp + 1  ㋕
  [2p S p + 1] ≡ −2 (mod p) = ℓ′p − 2  ㋖
  [2p S 2p] = 1  ㋗
の三つのケースを除くと(ℓ, ℓ′ は何らかの整数)、任意の整数 k に対して [2p S k] は p の倍数。のみならず、
  [2p S 1] ≡ p (mod p2) = ℓ″p2 + p  ㋘
  [2p S 2p − 1] = 2p(2p − 1)/2  ㋙
の二つのケースを除くと(ℓ″ は何らかの整数)、 α − 1 が奇数なら、 [2p S α − 1] は p2 の倍数。

従って下側インデックス α が偶数の場合、㋕㋖㋗㋘㋙が関係しないなら(すなわち偶数 α が 2, p + 1, 2p 以外なら)、
  [2p + 1 S α] = p [2p S α] + [2p S α − 1] ≡ 0 (mod p2)
が成り立つ(右辺の二つの項は、どちらも p2 の倍数だから)。㋕㋖㋗㋘㋙の一つ以上が関係する場合はそうならず、次の 3 種類の特例が生じる。
  [2p + 1 S 2] = 2p [2p S 2] + [2p S 1] = 2p(ℓp + 1) + (ℓ″p2 + p) ≡ 3p (mod p2)
  [2p + 1 S p + 1] = 2p [2p S p + 1] + [2p S p] = 2p(ℓ′p − 2) + ℓ″′p2 ≡ −4p (mod p2)
  [2p + 1 S 2p] = 2p [2p S 2p] + [2p S 2p − 1] = 2p⋅1 + 2p(2p − 1)/2 ≡ p (mod p2)
ここで [2p S p] は、値が p2 の倍数となる一般の事例(上述)に当たる。便宜上、その値を ℓ″′p2 と書いた(法 p2 の下では無いのと同じ)。

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